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Case.50 ページ10

「僕の初恋の話を聞きたいのなら、バイトが終わってからゆっくり聞かせてあげますけどねぇ」
「それは残念。ここで貴方の可愛らしいエピソードが聞けると思ったのに」

教えてくれないことは全く残念ではないけれど、恥ずかしそうな姿のひとつも見れないとは残念だ。
おもしろくない。

もくもくと食べていたオムライスが半分くらい減ったところで、ボウヤのもとに梓さんがそそくさとオレンジジュースを運んで去っていく。ボウヤは恨めしそうにその背中を睨みつけてから、気を取り直した様子で口を開いた。

「そ、そういえばAさん、『闇の男爵(ナイトバロン)』読んでるんだね!」

苦し紛れの話題変更に、私はちらりと傍らの本に視線を向ける。

「ええ。英訳は読んだことがあったけど、原文では読んでいなかったから」
「じゃあ、作品は前から知ってたんだ?」
「もちろん。ミステリー好きなら誰もが聞いたことのあるタイトルでしょ?」

そもそも、『闇の男爵』は工藤優作氏の代表作だ。ミステリー作家として名高い彼の作品を知らないと言うマニアを、私は聞いたことがない。

「ボウヤこそ、工藤氏の既刊本はすべて読んでるんじゃない?」
「当たり前だろ!いの一番に読んでる…んだ、から…ね」
「…うん?」

なんだろう、この歯切れの悪い感じ。しかもどこか自慢げ。

「いつも発売日に手に入れてるってこと?」
「そ、そうそう!予約して、朝一番に買いに行くんだ!」

取り繕うような笑顔が不審だけど、ボウヤは工藤氏と親戚だというし、連絡も取れるみたいだからこっそり生原稿を読ませてもらう機会があるのかもしれない。
もしそうならかなり羨ましい。

「じゃあ、『緋色の捜査官』は映画公開と同時に観に行ったの?」
「もちろん!…悔しいくらいおもしろかった」
「…へぇ?」

頭の切れるボウヤをして、ここまで言わしめるとはなかなか気になる。確か、モデルになった捜査官が秀一なんだっけ。

「観たいなぁ、『緋色の捜査官』…バタバタしてて、結局まだ観れてないのよね」
「じゃあ、僕と観に行きませんか?ちょうどチケットを持ってるんです」
「は?」

零がするりと会話に入り込んできた。

「…なんでそんなもの持ってるわけ」
「僕も観てみたかったんですよ、『緋色の捜査官』。それで、工藤優作氏の作品なら、Aも好きそうだと思って」

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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時

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