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Case.82 ページ48

「…安室さん、アイスコーヒーおかわり」
「はーい」

空のグラスを下げて、安室さんはコーヒーの準備に取り掛かってくれる。
その間も、Aさんは安室さんを完全に無視してスマホをいじっていた。

「…ボウヤ、何か言いたいことがあるなら言ってみなさい」
「うぇっ、いやなんでも」

大変だろうなとは思うけど。
はぐらかすと、じっとりと睨みつけられた。

「…えーと、スマホで何してるのかなって」

なんでもいいやと思って口に出すと、Aさんはそっとスマホをカウンターに伏せた。

「…仕事」
「えっ」

安室さんが反応した。まさか目の前でそんなことがされてるとは思っていなかったんだろう。Aさんのスマホを見る目が、なんとなく公安の目になっている。

「…さてと、そろそろ帰るわ」
「え、もう?」

おもむろに席を立ったAさんは、そのままさっさとレジに向かってしまう。それを当然のように安室さんが対応し、にこやかに見送っていた。ちなみにお釣りはしっかり手を握って渡してた。

「…安室さん、一体何があったの」

カウンターに戻ってきた安室さんに声をかけると、すでにいつもの調子に戻っていた。

「なんのことだい、コナン君」
「…今回のことは、僕じゃなくても分かると思うけどなぁ」

頬杖をついて見やれば安室さんは大して困った様子もなく、おかわりのアイスコーヒーを出してくれる。

「今までは、あんまり強引なことしてなかったじゃない。どこか遠慮してたのに、突然どうしたの?」
「そうだっけ?」

「他にもあるよ。安室さん、これまではAさんに触れないよう気を付けてたのに、もうやめたの?」
「!」

すると、安室さんは観念したようにこっちを向いた。

「君は本当によく見ているね」
「…初めてAさんを連れてきて以降、触れても髪の毛とかだったから。…やっぱり触らないようにしてたんだね」

見立ては間違っていなかったらしい。

「どうして?」
「…彼女が、怖がるかもしれないと思っていたんだ」
「……!」

言われて、Aさんとジンの関係を思い出した。
普段の赤井さんとのやり取りを見ていると、そういう恐怖心はまったく見えないから忘れていた。

でも、安室さんが触れるようになったってことは…。

「…良かったね?」
「…ああ」


そっとカウンターの向こうを窺うと、安室さんは嬉しそうに緩んだ瞳で、Aさんが出て行ったドアを見つめていた。

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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時

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