Case.81 ページ47
安室さんがキラキラしてる。
「A、今日のおすすめはガトーショコラだから、それとアイスコーヒーでいいか?」
「は?」
「外、暑かっただろう。お冷に少しレモン果汁を入れておいたから、飲むとすっきりするぞ」
「え?」
「ああ、もし眠かったらブランケットを貸すから言ってくれ。いくら夏でも、冷房の効いた部屋で薄着のまま寝るのは良くない」
「はぁ…?」
安室さんは来店したAさんの手を引いてカウンター席に座らせ、有無を言わさずいろんなものを用意していく。俺はそれを、ひとつ隣の席でアイスコーヒーをすすりながら眺めていた。
「…ボウヤ、見てないで助けたらどうなの」
「え?いやぁ〜アハハ」
「笑ってんじゃないわよ」
凄まれた。乾いた笑い声を流しながら、ちらりと安室さんを見やる。
…やっぱりキラキラしてんなぁ。
俺の他に客がいないからかと思ったが、どうやら違うらしい。
もともと外堀は埋めてたけど、Aさん本人に対してはどこか一歩引いたような感覚があった。それが、今は微塵も感じられない。
初めはさすがの安室さんでも気後れしてんのかと思ったけど、どうにもそういう感じじゃなかったしなぁ。
「そういえば安室さん、Aさんに対して普通に話してるけど…いつの間に敬語外したの?」
俺や子供達にはともかく、“安室さん”は基本敬語なのに。
「ついこの間だよ。そろそろ店員と客っていう垣根を越えたいと思ってね」
「店の中で越えようとしないでくれる?」
「へぇ?それはつまり、店以外でも僕に会ってくれるってことか?」
「調子に乗らないで。しばらくはデートなんかしてあげないから」
「なるほど。しばらくってことは、また行ってくれるつもりなのか。楽しみだな」
「ちょっと黙っててくれるかなぁ、透?」
「…うわぁ」
修羅場だ。
Aさん、笑ってるけど目が笑ってない。安室さんは全然堪えてなさそうだけど。
「まぁまぁ、これでも食べて機嫌直してくれ。今日のおすすめだ」
ガトーショコラを差し出され、Aさんは安室さんを睨みつけながら一口食べる。
「………」
うわぁ不機嫌。
「お味は?」
「…おいしくてむかつく」
「口に合ってよかったよ」
俺は何を見せられてるんだろう。
「Aさん、怒っててもそういうとこ素直だよね」
「食べ物に罪はないもの」
それはそうだけど。
無言でケーキを食べるAさんを、安室さんは嬉しそうに見つめている。
やっぱり俺は何を見せられてるんだろう。
971人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時