微睡みに落ちる２【降谷零/安室透】

Case.77 ページ43

急激に気持ちを乱高下させられて、やり場のない虚しさを感じる。デートの時は自分が優勢だと思って、風見にも自信満々に時間の問題だと言っていたのに、彼女の言動に一喜一憂するくらいには余裕がないらしい。

「では、どういう心境の変化で？」
「さぁね」

さらりと質問を躱されてしまった。

取り付く島もないな思っていると、Aは見る間にケーキを食べ終えてしまい、すぐに帰り支度をし始めた。

「ま、待ってください！まさかもうお帰りで？」
「そうよ。透、お会計」

しれっと伝票を渡され、それを見た梓さんが悲鳴を上げる。

「うそっ、Aさん帰っちゃうんですか！？まだお話してないのに！」
「ごめんなさいね。ちょっとやることがあって、息抜きをしに来ただけなの」

そんなぁと梓さんが気落ちした声で引き留めるが、今日のAには効きそうもない。梓さんが助けを求めるように僕を振り返ってくる。
僕だってまだ帰したくないが、いかんせん無策も無策だ。どうすべきかと考えている間に、Aはレジにお金を置いて、ドアを押し開けていた。

「ちょっ、はや…」
「A！」

名前を呼ばれたことに対してか、彼女はひらりと片手を振ると、振り返りもせずに外へ出て行ってしまった。
嘘だろ、本当に帰った！？

「ダメです安室さん！追いかけてください！」
「えっ、あ、はいっ！」

まさかの梓さんの指示に背中を押され、僕はAの後を追って外へ飛び出した。

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