Case.63 ページ25
設定、ね。
私も潜入中はギムレットを演じてたわけだけど、そこまで本来の自分と切り替えたりはしなかった。
「本当、トリプルフェイスなんてよくやるわ。凝り性とは聞いてたけど、そんなに作り込んで疲れないの？」
安室透とバーボンは、零の本来の性格からはかけ離れてる。普通ならボロが出たりしそうなものだけど。
「いや？どれも趣味嗜好まで切り離しているわけじゃないから、それほど大変でもないぞ。…ああでも」
「……？」
妙に言葉を切るからどうしたのかと思っていると、零がすっとこちらに手を伸ばしてきた。
「こうして気兼ねなく素の自分で話せる相手が傍にいてくれるなら、百の顔でも演じ分ける自信はあるんだがな？」
嫌味なく触れた指が、頬に落ちた髪をそっと耳にかける。その動きにつられて、ぱちりと目が合った。
まっすぐに私を見つめる瞳は優しく緩んでいるのに、その奥では熱を孕んだ何かがこちらを見据えていて。
───ドクン、と鼓動が跳ねた。
う、わ…！
ぶわっと熱が集まってきたのを感じて、慌てて顔をそむける。
「…っ、なにそれ。アンタならそれくらい、1人でやってのけるでしょ」
苦し紛れに言い返すと、くすくすと笑っているのが聞こえてきた。
「顔赤いぞ？」
「うるさい。…湯気のせいよ」
からかわれたことで、さらにじわじわと顔に熱が集まってきた。
だってあんな目、反則でしょ…。
目は口ほどに物を言うとはまさにこの事。しかも零の場合、分かっていてやっているから質が悪い。
「ははっ、湯気のせいか。…なら、そういうことにしておこう」
「………」
屈託なく笑うこの男に何か言い返してやりたいけど、口を開くといらないことまで言いそうだ。
なんだか負けた気がして悔しいけれど、墓穴を掘るよりずっといい。
大人しくラーメンをすすり、湧きあがってきたものを飲み下した。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました！ (2022年8月2日 2時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます！修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…！ (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです！更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください！ (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年5月19日 5時
