Case.58 ページ20
そのまま風見に連絡して指示を出しながら、胸の奥でじわりと懐かしさが広がるのを感じた。ギムレットと任務にあたっていた時は、いつもこうして電話越しにやり取りをしていたから。
Aが爆弾解除をしていると話したあたりで、風見は一瞬言葉に窮したものの、了解と返事が返ってきた。Aの方には公安を2人向かわせ、男の捜索の指揮を風見に任せて通話を切る。もちろん僕も見える範囲で目を光らせるつもりだが、同時にひとつ仕事があるのだ。
「───事件だね?」
獲物を見つけたとばかりに青い瞳を鋭く光らせたこの少年を、この場に留めておかなければならない。
「何があったの」
「大したことじゃないから、君が気にすることは何もないよ」
にこりと笑ってやれば、眉間にシワを寄せて不機嫌な顔をする。
「安室さんが関わってるなら、些細な事件じゃないでしょ?僕にも何か──…」
「僕がこの場に立ち会っているのは、ただの偶然さ」
言葉を遮れば、コナン君は不服そうにその続きを飲み込んだ。小学生相手に嫌なやり方だが、小学生らしからぬ子なのだから仕方がない。
「君の実力は認めているけどね、あれもこれも関わらせたいわけじゃない。この件は、僕達に任せておいてくれ」
「でも、万が一周りに被害が出たら…!」
「───ありえないよ」
それに、コナン君は虚を突かれたように目を丸くした。
「…信頼してるんだね」
誰を、とは言わない。だが、言わずとも分かる。
「ああ。それに足る人物だからね」
「…FBIなのに?」
「…それとこれとは別」
脳裏にニット帽の男がよぎって、口元がひくりと引き攣った。僕の様子を見て何か察したのか、コナン君は誤魔化すように目を泳がせ、ステージに登場した怪人に向けて「わー、こわーい」と棒読みの悲鳴を上げた。
そのコメントは本来僕に向けて言われるものだと察し、ため息と共に眉間を揉みほぐす。
子供相手になんて顔をしているんだ僕は。
軽い自己嫌悪に陥っていると、コナン君は先程とは打って変わって静かな口調で口を開いた。
「いろんな人が、Aさんが凄い人だって言うの…信じてないわけじゃないんだ。ひったくり犯を一撃で失神させたのもそうだけど、公安である安室さんの追跡を振り切るなんて只者じゃない。…でも」
「普段の彼女を見ていると、何故そこまで一目置かれる存在なのか分からない?」
「う、」
図星だったらしい。
こうして気まずそうに肩を竦めている姿は、年相応なんだがな。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時