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Case.52 ページ14

音楽と共にエンドロールが流れ終わり、照明が点灯する。
『緋色の捜査官』……おもしろかった。
映画館の座席にもたれて満足気にため息をつくと、隣からくすくすと笑い声が聞こえてきた。

「何よ」
「いや。かなり楽しんでいたようだから、誘ってよかったなと」

零はそう言って、屈託のない笑みを向けてくる。
…子供みたいな笑い方。
“安室透”は、女性に好かれるように作った人物像だから、こういう笑い方はしない。だからこそ、今は素顔を見せてるんだとよく分かる。

今日は、この前ポアロで誘われた映画デートの日だ。

「ほら、僕達もそろそろ移動しよう」

当然のように私のバッグを持つと、さり気なく右腕を開いて私が手を添えるのを待っている。
…デート、って言ってたしね…。
ここに来るまでもそうだった。プライベートでこうして歩いたことなんてなかったから、一層デートだと意識してしまう。

「…そうね」

その緊張を悟られないように、ポーカーフェイスを装って腕を取った。

「映画、どうだった?」
「マカデミー賞に選ばれるのも納得の出来ね。工藤優作氏は映画の脚本を手がけるのはこれが初めてらしいけど、ストーリーの展開や緻密なトリックは、彼らしさがよく出てたわ」
「ああ、それは同感だな。モデルがFBI捜査官というのが悔しく思うほどだった」
「ちょっと、それを私に言ったら嫌味なんだけど?」
「はは、悪い。つい…な。それはそうと、序盤で出てきた伏線が、中盤で早々に回収されたのは驚いた」
「あー、あれね。私もてっきりもっと後半まで引っ張ると思ってたわ。代わりに大したことないと思ってた伏線が重要だったなんて───」

感想を言い合い始めると、思いの外盛り上がる。話を聞いてると、零も優作氏のファンということがよく分かった。組織に潜入中はこうやって盛り上がるなんて出来なかったし、我慢してたのかもしれない。

意外と楽しい歓談をしているうちに、ショッピングモールに到着した。

さて。

「ちゃんと最後まで付き合ってよ、零?」
「もちろん。約束は守るさ」


いざ、安眠グッズを求めて。

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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時

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