【本編小説】この夏は君と。 (ページ46)

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◇燦然なる目覚め[三葉梢] ページ46

「ん゛ん…眩しっ…」

　ぐりぐりと眼を掻こうとするも、こつこつと透明のフィルターが邪魔をする。あぁそうだ。寝てしまっていたのだ。
　パイロットゴーグルを一度外して眼を思う存分掻く。そういえば掻きすぎて充血した事があったな。オッドアイみたいって言った中学時代の友人は元気にしているだろうか。

「おぉ…！何これすっごい！！デカーい！！！」

　ゴゴゴ…とオノマトペでも付きそうなくらいに膨大な質量を持つ船。いや。詳しくは客船だ。テレビでしか見たことが無いクルーズ船に、自分でも分かり易くテンションが上がった。
　パラメーターが最高潮に振り切れる。これじゃあ島に着いてからじゃ持たないな。

「探検！探検！！」

　るんるんとスキップをしながら船の中に乗り込む。叱咤叱責は覚悟の上だが、流石に客だ。追い出される事は無いだろう。

　まずは甲板。真新しい素材で作られた床は、歩く度に軽い音を鳴らした。
宛らタップダンスの様に遊んだ後、漸く周りを見れる様になって、つい先ほど出来た"友人"を見つける。

「さーやと紅邑君も探検！？」

　間合いを一気に詰め過ぎただろうか。それとも急に近付いて驚かせてしまったのだろうか。
何方にせよ悪い事をした。

「あれ、びっくりしたー？ごめんね！助走付け過ぎたのか知んないけど、なんか滑っちゃって。」

びくりと分かり易く肩を跳ねさせた紅邑君だが、すぐに此方に気を使うような言葉を言ってくれた。
思うが此処にいる皆は心底優しい。こんな人達と一時を過ごせるのだから、随分充実した日々を過ごせるだろう。帰ったら自慢してやろう。

「あ、ねーねー。探検だったら私も混ぜて貰ってもいい？面白そうな場所見つけてさ！！」

　半場強引に二人の手を取り、甲板から移動する。
駄目なら途中で止まるだろう。もしそうなれば一人で行けばいい。

「こっずー、どこ行くの？」

「いっぱい部屋あったでしょ！？一個くらい見ても大丈夫だよ！！」

「で、でも怒られたりとか…」

「じゃあその部屋私が使う！はいこれで解決！！」

「してないね…」と小さく呟く紅邑君の言葉にはあえて耳を貸さず、きらきらと眼を輝かせるさーやに自分の思いを投与する。やはり気が合う子だ。