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それから舞香は、あれだけやってきた仕事を止め
自宅療養することになった。
そして俺はそれに合わせて活動を休止した。
ワイドショーなんかでは
“俳優目黒蓮、愛妻の闘病のために無期限活動休止”
“愛妻は何と、すい臓癌だった…悲痛の目黒蓮”
とかって騒がれてる。
「蓮くん、何だかごめんね。また私のことで騒がれちゃって。」
『いいんだよ、騒ぎたい人が騒いでれば。』
「何か私達のこと公表した時みたいね。」
『あん時も騒がれたな〜今以上？』
「そうかも。だって蓮くん、キラキラのアイドルだったからね。」
『ま、ね。俺は今でも舞香のアイドルじゃない？』
「そーね。蓮くんはいつでもカッコいいもんね。」
そんなことを言いながら、二人でお茶してる俺ら。
特に予定もないから、思いつくままに過ごしてる。
舞香は花を生けたり、編み物したり。
ちなみに今編んでいるのは、凜と遥香のひざ掛けだ。合間には料理を作ってる。
俺はそんな舞香の助手してる。
と言うよりも、“コバンザメの蓮”復活。
ずっと舞香に引っ付いている。
もちろん、適度な引っ付きで。
自宅療養するようになり
舞香はステージ４とは思えないような体調だった。
見た目は罹患前そのもの。癌を患っているとは思えないほど。
このまま治ってしまいそうな錯覚に襲われる。
そんなある日、舞香から思わぬお願いがあった。
それはもう一度、思い出の場所をデートしたい。
それが舞香のお願いだった。
初めは俺らが一緒に歩いた場所。
実家から地下鉄の駅までの道のりを歩いた。
たった５分の道のりだけど、俺には特別な５分だった。
初めて抱きしめたのも、手を繋いだのもこの道。
それから俺らの母校へ。
キャンパス内は白衣姿の学生であふれてた。
そして俺の母校でもあり、凜の母校の暁月学園へ。
このチャペルを真っ白に飾り、結婚式を挙げた。
ウエディングドレスの舞香は本当にきれいだった。
最後は二人で暮らし始めたマンションへ。
建て直されて外観は変わったけど
ここで俺と舞香の生活が始まった。
凜と遥香が生まれ、家族４人で暮らした。
舞香は１箇所ずつ、懐かしいねって言いながら
目に焼き付けるように眺めていた。
そんな舞香の姿は儚くて今にも消えそうだった。
久しぶりに二人で外食した。
30年ぶりに訪れたあの店。
舞香と初めて食事した店だ。
あの時のようにグラタンを注文する。
向かいに座った舞香は、昔の舞香に見えた。
「蓮くん。」
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作者名：ちょ | 作成日時：2021年11月20日 18時
