運命なんて信じない８ (ページ42)

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ステージ４、他臓器への転移。
緩和ケア、余命半年。
頭の中でぐるぐると回るこの言葉たち。

「分かりました。まだ動けるので、ギリギリまで勤務しますので。」

主「そこはご無理をなさらずに緩和ケア病棟へお願いしたいのですが。」

「私は最期まで仕事がしたいと思っています。緩和ケア病棟へは入らず、その時は自宅で迎えますので。」

舞香の言っていることが分からない。
緩和ケア病棟へ入らないで仕事する？
その時は自宅で？

『舞香、それでいいのか？少しでも…』

「もう、決めたことだから。これでいいの。」

舞香の決意は固かった。

帰宅後、俺は舞香に聞いた。

『舞香、少しでも長くいてほしい。だから緩和ケア病棟で治療しよう。』

「緩和ケアにしても、うちにしても何も変わらないわ。幸い、うちにはドクターが３人いるし。動けなくなったら、ナース派遣してもらうから大丈夫。私はここで最期を迎えたいの。お願いします。」

『舞香…。』

子供たちを呼び、舞香のことを伝えた。
良くなっているとばかり思っていたから
二人のショックは計り知れないものだった。

翌日、仕事前に事務所へ行った。

『お二人にお願いがあります。』

今は事務所社長の岩本くんと副社長のふっかさん。
俺は二人にある決意を話すことにした。
それは舞香が仕事を出来なくなった時から
俺の仕事を一切、入れないでほしいこと。
今受けているものもキャンセルしてほしいこと。
身勝手なことは充分理解しているけど
俺はこうするしかないんだ。

二人は考え込んだ後で

黄「分かった。お前の気持ちを尊重する。」

紫「舞香ちゃんの側にいてやって。」

『ありがとうございます。』

黄「俺らは家族だ。辛い時にはいつでも俺らを頼って欲しい。」

紫「めめの側には俺らがいるから。」

こうして俺は、いずれ来てしまう最期を
舞香と二人で迎えることにした。

舞香はステージ４の告知を受けてから
容態はむしろ好転しているように見えた。
まるで癌が完治したかのように。
何ら以前と変わらない舞香だった。

後進のために論文を仕上げ、オペにも入る。
診察も今まで以上にこなしてた。
そんな中で癌と闘いながら仕事をする人たちへの講演会の講師をしたり。
忙しく毎日を過ごしている舞香は
本当にいきいきとしていた。

そして、4か月が過ぎた頃。

「仕事はもうお終い。やること全部やったわ。だからうちでゆっくりしたいの。」

突然の自宅療養宣言だった。