運命なんて信じない８ (ページ27)

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あまりにも冷静な舞香に俺も驚く。
医師だからといって
そこまで冷静にならなくても…

『舞香、無理してないか？』

「ううん。してないわよ。だって事実ですもの。」

『でも、もし辛いなら…』

「私ね、蓮くんと離れる方が辛いの。癌よりもね。」

『舞香…』

こんな時にそんなこと言っても
俺は笑えないよ。

「結果がどうあれ、私、治療して仕事するの。癌でも働けるっていうモデルケースになれたら。」

『舞香、そこまでしなくても。自分の体をもっと…』

「ううん、するの。絶対に。これは譲らないわよ。いくら蓮くんのお願いでも。」

舞香の言葉には嘘はなかった。
俺は舞香さえ無事でいてくれればいい、
そう思うのはわがままだろうか。

MRIの２日後、生検をすることになった。
凜はあれ以来、舞香の元へは来ない。
ショックが大きく、受け止められずにいた。

遥香には俺から状況を説明した。
凜よりも遥香の方がダメージが強く
大学を休み、ずっと舞香の側から離れようとしない。
遥香は口にこそ出さないが
舞香に憧れ、尊敬しているから。

俺は子供たちの前では気丈に振る舞うが
１人寝室にいると、魂が抜けたようになってしまう。
もし舞香を失うことになったら…
そう考えると何も手に付かない。
舞香のいない世界なんて
俺には想像すらできないんだ。

そして２日後、生検が始まった。

検査後、俺の仕事終わりを待って説明があった。

神「全ての検査結果からの診断です。癌は腹腔動脈へ転移していました。ステージ３です。外科的切除は不可能です。これから化学放射線療法と化学療法を行います。ここからの治療は私ではなく、すい臓専門医へお願いします。」

「ありがとう、神林先生。心外なのにここまでしてくれて。感謝します。」

神「いえ、これからすぐに移動します。よろしいですか？」

「大丈夫よ。さっさと治療しましょ。」

俺は二人の会話を他人事のように聞いていた。
ステージ３？
腹腔動脈に転移、外科的切除不可能？
頭では分かっていても理解できない。

消化器外科の説明を受けるために、一旦、病室へ。
舞香は淡々と自分のカルテを読んでいる。
専門ではないが、舞香なりの診断をしているんだろう。

何でそんなことができる？

『舞香、待ってくれよ。』

「蓮くん？」

『何でそんなに冷静でいられる？ステージ３だぞ。他臓器に転移してなくても、外科的切除ができないんだぞ！』

思わず声をあげてしまった。