【wrwrd！】無能の妹が幹部に溺愛されている件

妹、謁見する7 ページ7

さてここで物語冒頭直前に戻るのだが、部屋に入ってきたグルッペンはAの座るソファーの隣りに腰掛け、そしてじっくりと彼女の姿を上から下まで眺めた。


「いや全く、非の打ちどころが見当たらんくらいには美しいな。」
『グ、グルッペン総統もとってもお似合いですよ？』
「何故に敬語をつかう？仕事以外では使うなと言ってるだろう？」
『いや、あなた自分の格好と顔面見てからもう1度考えて言ってくれます？』


グルッペンは昔から容姿端麗な子供であったが、成熟した大人になり、そのあどけなさが抜けた顔は世の多くの女性を魅了するくらいには整っている。度々顔は合わせていたが、いつもの黒の軍服ではなく煌びやかな衣装を纏い、普段と違った雰囲気のグルッペンを間近で見ることは流石に彼女も慣れて居なかった。
Aの言葉に一瞬不思議そうな顔をしたグルッペンは何かを察したのか、ニヤリと笑って更に近寄る様に身体を傾けた。ビクリと震えた彼女はそっと目を逸らしてあくまで気づかない振りをして平静を保とうとした。


『なんか近くないかな？』
「近頃メガネの調子が悪くてな、もっとよくお前を見たいんだ。許してくれ。」
『ぐ、グ、グルちゃんそんなに目悪くなかったよね？』
「気のせいじゃないか？」
『何が気のせいなんですかねぇええ！もう！近いよ！』
「似合うとは思っていたが……これ程綺麗になるとは、予想以上やな。」


蜂蜜色の髪が顔にかかるくらいに近づけられ、楽しそうな紅の双眸は獲物を捉えたように細く歪んだ。いつの間にか腰に回されていた手がするりと撫で、もう片方の手で顎を動かされ、名を呼ばれる。ひぃ、と言いながらも呼ばれると逸らされた目を合わせてしまうのは、今までの主従関係が要因なのだろう。ぶわっと頬に集まる熱を感じながら精一杯声を振り絞った。


『い……。』
「ん？」
『いつものグルちゃんじゃないから、仕事に切り替えないとめっちゃ緊張してまうの…グルちゃんその、あの、か、かっこいいから……。』
「……お前なぁ。」
『グルちゃん？』
「そういうの、煽り文句っていうんだ。どこで覚えてきた？」
『え？なにが？』
「…緊張しなくても俺はいつもの俺だ。」


不思議そうに首をかしげる彼女を置いてぐっと立ち上がり大きく溜息を吐いたグルッペンは、そっと目を伏せ生殺しもいいところだ…と呟いたが、彼女に聞こえることはなかった。
そして物語冒頭にいたり、彼女の手をとりそっと部屋の外へとエスコートして行ったのだった。

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