【wrwrd！】無能の妹が幹部に溺愛されている件

妹、到着する2 ページ36

「ふぅ、どこも飯はうまかったなぁ。」
『そうだねゾ、ゾム……くん。』
「ヒヒッわざとらしいで、しっかりせぇ」
『仕事のオンオフ分けるタイプなのゾム君が1番知ってるでしょうに……。』


ホンマにコイツ見てて飽きひんな。
この生粋の弄りやすさというか、少しだけつめが甘かったり目が離せなかったりするのはきっと兄譲りのものなのかもしれない。
それにしても大先生が絶賛するだけあって確かに整った顔をしている。この前のドレスの時もグルッペンの横に立って様になっていた。今は普段の黒軍服を脱いでラフな格好しとるけど、こう見ると至って普通の女の子やな。そうやってぼんやり見ていると、何やらカバンから出した書類を見ていた彼女がはっと気がついたように顔を上げた。


『食べ歩きしてる場合じゃないです。そろそろ仕事の時間ですよ。』
「えー？あともう1軒ええやん。」
『まだ食べる気ですか？！』
「余裕や余裕。」
『時間的にひとつも余裕じゃないですから。ほら、行きますよ。まず行く前に正装しないと。』


ぐいぐいと俺を引っ張るAはすっかり外交官の顔で、宿に戻りフォーマルな格好に着替えた。俺らは城へと真っ直ぐ向かっていた。
普段なら影から着きそう俺は今回は外交員の1人としてAに着きそう。相手方はAが目当てなのだろうことは明白なので、俺は彼女に夢中になった隙をついて有利になれそうな情報を潜入して抜きとる。という作戦だ。明確なものが見つかれば即終了。戦争開始だそうだ。しかしあのオスマンがつかみきれなかった尻尾を何とか掴むというのはかなり難易度高めな気がする。 そんなことをもんもんと考えていると、城門から恭しい態度で一人の男が出てきた。


「これはこれは我々国様。遠路はるばるようこそいらっしゃいました。」
『こちらこそ私共の勝手な申し出をご承諾頂きありがとうございます。』
「いやぁ私も総統のお気に入りと名高いA様とお話させて頂けるなんて光栄ですよ。して、そちらの方は」
『私だけではまだ経験も浅いもので、共に話を聞くため外交員のものを同席させたいのですがよろしいでしょうか？』
「……なるほど。そういうことでしたら。」


はぇーわっかりやすいくらい嫌な顔しとるやんコイツ。っていうか幹部成り立てのAが本当に一人で来るとでも思ってきたのか？よろしくお願いしますと差し出された手を恭しく握り、いかにも下っ端の雰囲気を醸し出す。明らかに目が冷たい。こんなんが外交官かよ。オスマン苦労してたんやな。

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