妹、遂行する2 ページ27
普段より生気のない様子が見て取れるこの男鬱は、昨日突然総統室に現れてから無言でソファーに寝転がってからずっとこの状態だった。妹関連で潰れた鬱が復活するまでにはそれなりに時間がかかることを彼らはよく知っていたからか、グルッペンもトントンも彼を咎めたりはしなかった。あえていつもの調子で話し掛けるトントンは、何とか彼に動く気力を持たせようと側により会話を続けた。
「そんななるくらいなら余計なこと言わなきゃ良かったのに。」
「…二回目や。」
「二回目?」
「Aちゃんと本気で喧嘩したの、これで二回目……。」
「お前ら、あん時から喧嘩してへんの?それはそれで凄いな。」
「褒められても全然嬉しくない……。」
鬱とAは普段から兄が妹を寵愛しているだけあって、些細な喧嘩はまず起こらない。Aも基本人に合わせるタイプで聞き分けのいい方なのでワガママで困らせるなどということはまず有り得なかった。彼等が喧嘩をするという時は余程お互いに譲れない理由を持っているというわけで、トントン達の記憶に残っているものをぼんやりと思い返していた。
再び大きなため息をつきながらいかにも寂しそうな顔をする鬱を見て、先ほどまでより幾らか人間の目をしていることに内心安心をしながらトントンはさらに言葉を続けた。
「そんな顔すんなら喧嘩すんなや。あんまり争わんから余計に仲直りが分からんねん。」
「そらそうやけど……。」
「Aのことだ、仕事と割り切ってくれるとは思うが…。いい加減お前もアイツを、そして仲間も信用してやれ。」
「せやで、心配しすぎる方があの子からしたら信用されてへんって思ってまうやろ。」
「ちゃうんよ、信用してるよ?でも、いくら大人になってもあの子は僕の妹なのは変わらんやろ?しかもあんなにいい子で可愛い妹、心配にっちゃう方が自然やって。」
「……お互いそろそろ矯正が必要やな。」
「まぁいい、帰ってきたら仲直りしろよ。」
「あー、めっちゃしんどい…。」
ぽつりとつぶやかれた言葉は、吐き出された紫煙のように誰に聞かれることもなく空に霧散していった。
☆
「A、おーい、聞いとる?」
『……は、はい!なんでしょう。』
「なぁ……そんなに後悔するなら喧嘩しなきゃよかったやんか。さっきからずーっと城の方角見つめて。」
『っ…これだけは、譲れないんです。』
ドゥンケル国までの道のりで少し休憩をしていたゾムが、もう見えなくなった我々国の城の方角をずっと見つめて上の空のAにつめよれば、少し動揺してから真っ直ぐな瞳で言葉を返した。
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零歌 - え、うますぎでしょ!? 憧れます‼ 続き、待ってます、! (2023年3月31日 6時) (レス) @page36 id: 2cc0278ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 面白いところで終わってしまった…!!これからも、気長に作品更新を待っているので無理のないようにしてください!いつでも待ってますから!!! (2022年8月17日 9時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - 小雨さん» こんな更新停滞小説にコメントありがとうございます神作品などありがたいお言葉まで!!そのうちひょっこり現れたらまた楽しんでいただければと思います。 (2020年11月22日 17時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
小雨 - 歴さん。こんにちは!いやー見た瞬間に神作品だと分かりました()更新無理しないでください!出来るときにフラッと帰ってきて下さいね!それまでのんびりと待っておきます! (2020年11月9日 10時) (レス) id: 459de324fd (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - めっぴぃーさん» こんな更新されてるかも分からん作品にありがたいコメントありがとうございます。のろのろ具合は変わるかわかりませんが、気長に待っていただければと思います。 (2019年1月5日 2時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:歴 | 作成日時:2017年8月15日 21時