妹、謁見する ページ1
「ふむ、俺の見立て通りだな。よく似合っている。」
『あの、これ、他にないんですか…。』
「ない。」
『……断言ですかぁ。』
「安心しろ、お前は俺についてきてくれればそれでいい。」
とある一室、着飾った彼女を見て満足そうに笑ったグルッペンが手を差し伸べる。彼女はおずおずと手をのせ、そして導かれるがままに部屋を出た。
さて、何故いきなりこのような展開になっているのか、始まりは就任式の翌日にさかのぼる。Aはグルッペンから朝から急な呼び出しがあり、身なりを整えて一番に部屋に向かった。上質な扉を開いた先にはいつものように中心の机に座り、手を組んで来るのを待っていたかのような顔でこちらを見据えていた。
『お呼びでしょうか、グルッペン総統。』
「ああ、呼び立ててすまない…まずは就任式、ご苦労だった。」
「いえ、あのように国民の皆様に盛大に受け入れていただけたのは、私としても大変光栄なことでした。」
感謝を込めて返答したのちに頭を上げると聞き遂げたように一つうなづいてから、唐突に不満いっぱいに綺麗な顔をゆがませた。あの口喧嘩の後何かあったのかは一目瞭然で、首をかしげているとそれに気づいたように首を横に振って咳払いをした。
「そこで、元国王からのお達しでな、お前を今度の夜の社交パーティに連れて来いと仰せだ。」
『私を、ですか?』
「ああ。就任式のお前を見てもう少し話がしたいそうだ…お前も他の仕事があるから、断りたいのだが、そうもいかなくてな。」
『私が邪魔にならないのであれば、護衛も兼ねてお供させていただきます。』
「うむ。当日は俺とオスマンとトン氏についてきてくれるだけでいい。」
『分かりました、ただ私……。』
「ああ、服のことなら気にしなくていい。こちらで準備しているから何も心配はいらない。」
『それもありますが、隊長はいいんですか?私の上司なのに。』
「いいんだ。アイツは向こうに好かれてないからな。俺が反対を押し切って入れた幹部のうちの1人だし。」
ご機嫌取りのためにも、いない方がいい。まるで気を使う事すら億劫な様子で答えるグルッペンは、本気で煩わしいと思っているのだろう。
嫌悪感丸出しの顔に苦笑いしていると、大丈夫だ。今は事を起こしたりはしない。と、さっきまでの態度からはまるで信用ならない言葉が帰ってくる。ゾムの事も些か気にはなったが、問い詰めずにそっとしておくことにした。それよりも今は目の前の不機嫌な主をどうにかすべきである。
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零歌 - え、うますぎでしょ!? 憧れます‼ 続き、待ってます、! (2023年3月31日 6時) (レス) @page36 id: 2cc0278ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 面白いところで終わってしまった…!!これからも、気長に作品更新を待っているので無理のないようにしてください!いつでも待ってますから!!! (2022年8月17日 9時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - 小雨さん» こんな更新停滞小説にコメントありがとうございます神作品などありがたいお言葉まで!!そのうちひょっこり現れたらまた楽しんでいただければと思います。 (2020年11月22日 17時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
小雨 - 歴さん。こんにちは!いやー見た瞬間に神作品だと分かりました()更新無理しないでください!出来るときにフラッと帰ってきて下さいね!それまでのんびりと待っておきます! (2020年11月9日 10時) (レス) id: 459de324fd (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - めっぴぃーさん» こんな更新されてるかも分からん作品にありがたいコメントありがとうございます。のろのろ具合は変わるかわかりませんが、気長に待っていただければと思います。 (2019年1月5日 2時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:歴 | 作成日時:2017年8月15日 21時