ep.52 ページ4
.
「ここで待っててくれる？」
Aは ここで！？ と叫びたくなるのをぐっと堪えた。
霧が立ち込める森は、今にも木々の隙間から何かよからぬものが飛び出てきそうだ。
「わかった……命を大事にしてね」
「君もね……行こう」
ハリーは何かに急き立てられるかのようにハーマイオニーの腕を掴み、走り出した。
「グリフィンドール生ってちょっと難儀なものよね」
どう思う？と言いながらバックビークを見ると、飛んでいる鳥に噛み付くのに熱中していた。
「あなたは楽しそうでいいわね……ここってすごく＿＿」
遠くで獣の鳴き声が聞こえた気がして、Aは身震いをした。
「＿＿＿＿不気味だわ」
*
十分以上もそうしていただろうか、Aは木の根元に座り込んで草を毟り、バックビークは次々鳥を落としている。
おかげで地面は鳥の羽や死体、雑草や枯葉で色とりどりになっている。
「あの子たち、生きてると思う？」
皮肉るようにバックビークの足元に落ちていた羽を宙に投げると、遠くから甲高い狼の遠吠えのようなものが聞こえた。
「ちょっとバックビーク！ああもう！」
それを聞いた瞬間、バックビークは鎖を掴んだAの手を振り払って鳴き声の聞こえた方向へ全力で駆け出してしまい、Aは顔面蒼白でその後を追いかけた。
「待って、待っ＿＿＿ハリー？」
「A！」
ヒッポグリフの全力疾走に小娘が敵うはずもなく、やっとのことで追いついた時にはバックビークがその大きな鉤爪で二足歩行の狼を蹴り倒し、追い払った後だった。
「ごめんなさい、この子ったら急に走り出して……」
「いいのよ、おかげで私たち命拾いしたわ…」
「ルーピン先生、今日は散々だな」
「ルーピン＿＿えっ？」
獣とは大きくかけ離れた名前にAが聞き返すと、辺りがよりいっそう凍るように冷えだし、ハリーとハーマイオニーが走り出した。
「君はそこにいて！」
「私たち、シリウスを吸魂鬼から救ったあと＿＿ああもう後で全部説明するわ！」
*
案外すぐに帰ってきた二人は晴れやかな顔で、バックビークに跨った。
ヒッポグリフの世話をいつもしているとはいえ背中に乗って飛ぶのは初めてで、Aは終始叫びっぱなしだった。
「私歩いて帰ってもよかったわよね！？」
「つべこべ言わないで！私だって怖＿＿きゃああ！！」
先頭に乗るハリーはひどく興奮した様子だが、後ろ二人はそれこそ誰かに見られてしまうのではないかと思うほど叫び散らかしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちとせ(プロフ) - Rrrrさん» コメントありがとうございます。はい、もちろん……(；；)ただ(私の解釈での)ハッピーエンドにはなりますのでご安心ください(？) (3月9日 9時) (
レス) id: 12c0d6c6fa (このIDを非表示/違反報告)
Rrrr(プロフ) - 最近読み始めた者なのですが救済等は無いのであれば、フレッドもちゃんと…? (3月9日 6時) (レス) id: eeb020f16b (このIDを非表示/違反報告)
赤田 - すごい、悪役令嬢的なことになっても、吹っ飛ばしてる、すごい。 (2023年3月8日 19時) (レス) @page45 id: 3d88a3b324 (このIDを非表示/違反報告)
ちとせ(プロフ) - 村民さん» ありがとうございます♡♡読み返していただけたなんて、とっても嬉しいです(><)フレッドくんのかっこよさの10000分の1も表せていない気がするのですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです( ¨̮ ) (2023年2月20日 12時) (レス) @page48 id: eeb6bd2221 (このIDを非表示/違反報告)
村民(プロフ) - 初めまして！好みのお話で最近フレッドにハマった事もあり1日で何度か読み返させてもらいました！続きも楽しみにしてます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ (2023年2月20日 5時) (レス) @page47 id: 82c45efafd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちとせ | 作成日時：2023年2月13日 13時
