人類最強×天才策士

秘めたる父親の思い ページ10

「…何を言いたいわけ？」



アニはAに背を向けながらも、静かに拳を握った。




対して、Aはさっきの動揺が嘘のように落ち着いてる。







＿＿＿気持ちを抑制し、考える




そうだ、冷静になれ。









いまは離れ離れとなった父の、大事な教えだ。









・









Aの父は決して娘の調査兵になる、という夢を押しているわけではない。






他の親と同様に、娘を壁外に行かせたくない。




…Aが訓練兵として過ごしているいまも、変わらぬ思いでいる。









彼自身は兵士ではないが、彼の姉…Aの伯母は調査兵だった。





気高く仲間思いで、誰よりも人類のために兵士を目指し調査兵団に入り、そして







部下を庇って儚く散った＿＿＿








そんな姉を誇りに思っているわけではないが昔、一度だけAに姉の話をした。








深い意味はない。





ただ、彼女の血を引く娘に伝えたいと思っただけだ。







幼くてその記憶は残っていないはずで、仮に覚えていたとしてAがそれに影響されたかはわからないが





〈私、調査兵団に入りたい〉





覚悟をして、決意を固めた娘に姉を重ねたくなかったから、彼は姉のときのように猛反対はせずに、生きる為の言葉を与えた。





彼の妻であるAの母も同じ思いでいてくれたようで、Aに抗議するようなことはなかった。









・









＿＿＿ただ、Aの心配だけが両親に残った。







あたりまえといえば、あたりまえ









安全に、とは到底言い難い。




だから開き直って、人類のために戦ってこい、と言いたいわけではない。









調査兵団に入る覚悟と決意をしたとき、Aは大事なもの、すなわち…家族との生活と身の安全を捨てた。






その代償を、これからの彼女の人生で獲得できれば＿＿＿








Aの両親は、今日も静かに祈る。

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