君がいるから【吉野北人】 (ページ39)

今日:2 hit、昨日:26 hit、合計:194,169 hit

▽ ページ39

北人side

頭がぼーっとして
体に力が入らなくなった

目の前にAさんがいるのに

行かなきゃ

行って、「今日どこ食べに行きますか？」って
言おうと思ってたのに

A『ほくちゃん！！』

薄れていく意識の中

目の前には心配そうなAさんの顔

でもここでファンの人に見つかったら
Aさんが危ない

「行って…」

それでもAさんは行ってくれなかった

頑張って小さな細い体で
俺のこと支えながら

タクシーの中でも

『ほくちゃん』

『ほくちゃん、もう少しでつくよ』

『大丈夫？しんどいよね』

と優しく声かけてくれた

そしてAさんの家まで連れて行ってくれた

やめてよ。

そんなことされたら勘違いしちゃう。

なんでそんなに優しくするの。

なんでそんなに優しいの。

でも、やっぱりまだ勘違いだった

「好き」とどんなに伝えても

答えはやっぱり出なかった

やべえ、俺焦ってんなぁ

熱のせいで感情のコントロールもきかねえし

A『あ、お疲れ様です。
すみません、甲斐Aです』

突然誰かに電話しているAさん

体がだるくて耳に入って来ない

ハァ…ホントついてない

しばらくすると
Aさんが戻ってきた

A『ほくちゃん、力矢さんに電話しておいたよ。明日は多分オフだと思うし、また移動するのもほくちゃんが辛いだろうからこのまま休ませてあげてほしいって。だから今日１日ここいて？』

Aさん、何かあったときにって力矢さんと連絡先を交換していたみたい

「Aさんに…うつる」

A『大丈夫だよ、私免疫強いから(笑)』

「…ごめん。」

A『大丈夫だよ、私明日仕事休みだから
なんかあったら言ってね』

どこまで優しいの

さっき我慢してたばっかりなのに

熱のせいで頭がぼーっとする

「……免疫強いって言ったよね？」

A『ん？』

「…風邪に、強いんだよね？Aさん」

A『そうだけど…』

グイッ

「移したらごめん」

我慢できなかった

俺はAさんにキスをしていた