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美術室に響く水の音と、カランと音を立てて床に落下した筆洗器。
「………ん？」
しかし、いつまで経っても水の衝撃は来ない。
固く瞑った目を開くと、
「……君、見てられないね」
「雲雀さん！」
怒りを顕にした雲雀の端正な顔が、紅呂奈の目の前にあった。
咄嗟に紅呂奈を庇い、覆い被さった雲雀に絵具が溶けた水は思いっきり掛かったのだ。
ポタと雲雀の艶やかな黒髪から水色の水滴が滴り、それが紅呂奈の頬に落ちる。
雲雀を巻き込んでしまった紅呂奈は正しく顔面蒼白。
「ぎゃあ！？ごごごめんなさい！！！」
慌ててポケットからハンカチを出して雲雀へ恐れながらも差し出した。
依然としてムスッとした表情の彼は素っ気無くそれを受け取る。
そこで、紅呂奈は気づいてしまった。
＿＿かっ、顔が近い！！！
生死の境にいることは自覚しているが、ただひたすらに目の前の美貌に動揺する。
思わず美しいものに目がない、紅呂奈元来の趣向が顔を出しそうになる。
全身から火が噴出しそうな勢いで、真っ赤になった紅呂奈に首を傾げる雲雀。
「なに」
「ど、退いてもらえますか…」
紅呂奈が訊ねると、雲雀は無言で彼女の上から退いた。
「それにしてもどうしよう、学ランびしょびしょですよね……」
「別にいい」
バサッと翻した学ランからは、びちびちっと水滴が飛び散った。
「「…………」」
数秒の沈黙の後、黙って紅呂奈が手を差し出すと、雲雀は呆れたように羽織っていた学ランを渡す。
腕章は外され、彼のワイシャツに移動した。
「……申し訳ないです」
「そのことは別にいいって言ったでしょ」
そう素っ気無く言い放つと、彼はケータイを取り出した。
なにやら話し、それを仕舞うと雲雀は紅呂奈に目を向けた。
「早く帰りなよ。もう暗くなるから。」
それは親切心というより、鬱陶しいという感情から来てるようであったが、紅呂奈は雲雀を前に食い下がる。
「えっ、でも」
視線を動かす。
その先には、筆洗器がひっくり返り悲惨な事になったままの床が。
「それは風紀委員がなんとかするから、君はさっさと帰って。」
そう言うと雲雀は、珍しく学ランが掛かっていない背を向け、どこかへ行ってしまった。
紅呂奈は誰もいない美術室で１人、
「…帰ろ」
と呟いた。
妙な、胸騒ぎを覚えながら。
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くらら(プロフ) - たくあんさん» ありがとうございます！ (2019年4月27日 23時) (
レス) id: a6342bde11 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - 最近雲雀さん不足だったから嬉しい…(´･∀･`)更新頑張ってください(●´▽`●) (2019年4月27日 0時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろこ | 作成日時：2019年4月14日 21時
