# パレット 【 ヒプマイ短編集 】

優しさ × Ichiro.Y ページ18

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「 もしもし、A？ 」








珍しく彼女のAから電話が鳴った。







『 一郎、今電話大丈夫？ 』









「 依頼もねぇし、今日は彼奴らも学校だからな。

…なんかあったのか？ 」








『 ううん、何もないの。

今仕事帰りでさ、歩いて帰ってるからその間電話したくて。 』








「 可愛い彼女の頼みだから幾らでも付き合うぞ。 」








『 一郎は優しくなったよねぇ〜。 』







「 …あの時のAは俺じゃなくて…ッ 。 」







『 …まだ左馬刻と仲悪いんだ。 』









『 私のせい？ 』と苦笑するAに「 ちげぇよ 」と笑ってやる。


本当にAのせいではない。


まあ確かにあの頃俺じゃなくて左馬刻と付き合ってたことは今でも気にくわねぇけど。









「 なぁ、本当はなんかあったんじゃねぇの？ 」








『 …どうして？ 』







「 Aが電話かけてくるときは何かしらある時だってあの頃に思い知らされたからな！ 」









『 大丈夫！ 』っていつも無理やり笑いやがって、左馬刻となんかあった時、限界になるまで電話してこねぇんだよな。









「 何かあったんだろ？ 」








『 いつも一郎には見抜かれるんだよね。 』






「 何があった？ 」







『 …私仕事辞めようかな。 』









話を聞けば男の新人ばかり優遇され、Aの扱いは酷いらしい。


…上司には毎度泣かされるまで怒鳴られるという。









「 …辛いのに気付いてやれなくてごめんな。

そんなに辛いなら辞めても良いんじゃねぇか。 」









彼女が辛いって時に、そばにいれない自分が歯がゆい。


…あの頃からそうだ。


俺が今見なきゃいけねぇのはA自身で、今の彼氏は俺だ。


左馬刻は関係ねぇ。









「 俺がAのこと一生幸せにしてやるから。 」









『 …ありがとッ 。 』







「 帰り寄ってけ。

今日はずっと甘やかしてやる。 」









絶対に離さねぇ。


幸せにしてやるから。









(( …辛かったな。 ))


(( もう俺がいるから大丈夫だ。 ))









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