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おやつの刻が近付いて、双方頻りに時計に目をやるようになった。
六時間なんてあっという間、まだ一緒に居たいなんて意識してしまったら尚更。
でも彼は営業でやっているだけ。
惚れ惚れするような笑顔も、紳士的で献身的な態度も、女性への気配りができているのも、全ては自分が生きていく為。
きっぱりとした関係だと頭では理解しているから、想いを侍らせているのは自分からの一方通行だっていうのも重々わかっている。
余計に、虚しい。
「……時間だね」
「あ……」
一人思考をぐるぐる巡らせては難しい顔をしている内に、もう約束の刻は過ぎたようだ。
先ほどまでのはサービスだと告げるように、冷めた顔で場を後にする祥彰君。
じゃあねの一言もない、まぁ当然か。
元から小柄であった彼の背中は、どんどん小さくなる一方。
このままでは後悔するかも知れない、そう予感した。
「待って!!」
「え、どう__」
何トーンも低い声が、私が腕を掴むのと同時に途切れる。
目を見開いた祥彰君の顔が、怪訝そうに歪んでいく。
ここまで来たなら、もう伝えてしまおう。
「……レンタルだってわかってるけど、正直祥彰君はどストレートタイプなの。このままさよならしたくない……」
「……ごめんね、これは仕事だから。気持ちには応えられない」
止めてよ。
同情するような、そんな声色で答えないで。
冷たく突き放して欲しかった、私の我が儘だけど。
私なんてただの食い扶持なんでしょ、もっとはっきり諦めさせてよ。
目尻が熱くなるのが分かる、思わず目を伏せてしまう。
「けどさ」
振り払われるかと思われた私の手は、逆にゴツゴツの手で包み返される。
勢いよく顔を上げれば、そこにあった祥彰君の顔は悪い笑みで。
「僕は現金な人だから、いーっぱい奢って貰えればちょっと考えちゃうかも」
彼の方が大人で、きっと何枚も上手。
本当はそんなのも嘘なんだろう、どこかで理解はしているけれど。
それを信じても良いですか。
単純な私はまんまと口車に乗っかって、手のひらで踊らされるんだろう。
「またいっぱい貢いでね、Aちゃん」
でも一抹の希望があるならば、たんと貢いでやろうじゃないか。
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杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» あっ、迷走してらしてるんですね…私は、最後にきっぱり片付ける文(???)というものが好きでして…w特にfkrさんの誘拐(?)の話みたいな終わりかたが好きなんです〜あっ、ご丁寧にどうも…此方こそお世話になります(?) (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - 杠-ゆずりは-@発狂同盟さん» 了解しました。とても素敵なシチュ……おみそれしました(謎) 個人的に完結方法に迷走する中、そう言って頂けると大変自信に繋がります。どうぞ続編でもご贔屓に(??) (2019年10月8日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
杠-ゆずりは-@発狂同盟 - 山さん» いや、まぁ…全部好きです((((尊いことに変わりはないのでおっけーです(((り、リクエスト…!私はkwkmさんが大好きなので、夢主ちゃんが振られたあとに慰めて付き合う…的な…?(語彙力なくてすみません)のがみたいです!検討していただけたら幸いです…! (2019年10月8日 21時) (レス) id: 550abac7bf (このIDを非表示/違反報告)
山(プロフ) - やまうみ。さん» 了解致しました。区切り上続編でのご提供となりますのでご了承下さい。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: c5ddeb2343 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 先程はありがとうございました(土下座) 浅紅に嵌まれ大好きです。山様のガチ勢ですのでリクエストします(?) どこか儚く消え行きそうな夢主ちゃんをymmtさんが好きになるお話が見たいです。エンドは恋に落ちるところでも結ばれるところでも。シチュはお任せします。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
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