奏 −YG− 第二章

＊　(You) ページ36

「二度と会わないと言ってるんじゃないの
少しの間距離を置いて考えたいしカズに許しを請いたい…」



カズの許しを得るなんて一生かかっても無理だ
それくらい私にも分かっている



JN「ごめん…俺にはよく分からない
どうしてAさんがカズさんの許しを得る必要があるの？」


「カズを裏切っていた人の恋人を好きになってしまったから…
だから許しを得ないといけないんです」


JN「でもそれは絶対に無理だよね？
それにカズさんはそんな事すら許せない程心の狭い人だったの？
そもそもAさんは何も知らずにユンギを好きになった…
そうでしょ？
だから何も悔む必要はないんだよ？」



諭すようなジンの口調が氷となった心を少しだけ溶かしてくれた



JN「泣く程好きな人とは何があっても離れるべきじゃない
もし離れる事を選択して…
いつかユンギの熱愛報道や結婚報道を耳にしても胸を痛めないと言う自信があるの？
Aさんが好きなったユンギはBTSのシュガなんだ…
酷な事を言うけどいつか必ずそんな報道を目にする日は来るんだよ？」



目に涙が溜まり視界が霞むから瞬きでそれを逃す



JN「その時になって後悔しても遅い
自ら手放した物は二度と帰っては来ないんだよ？
泣いても叫んでもね…」



ジンの言う通りだ
それでもまだ私の心の大部分は凍りついたまま



YG「俺は何があってもAの事を諦めない…」



ユンギの悲痛な呟きが静まり返った病室内に響く



YG「いつかAが俺じゃない誰かと付き合ったり結婚したって事実を耳にしたら絶対に立ち直れない
だから絶対にAの手を離さない」



ユンギは私の右手を包み込んだ両手を自分の額に当て目を閉じた


祈るかのようなユンギのそのしぐさは凄く切なくて儚くて…
その手を振り払う事は出来なかった


だけど言葉をかけてあげる事が出来ないまま時間だけが過ぎて…
溢れ出しそうになった涙を隠すかのように立ち上がったユンギはそのまま病室を出て行った



JN「涙を見てもまだユンギがしてしまった事を許せない？」



ユンギが座っていた椅子に座ったジンさんは困り顔



「いえ…
許せないのはユンギの事ではなく自分自身なんです
さっきも言った通り私にとって実の兄のような存在だったカズを裏切っていた人の恋人であるユンギを本気で愛してしまった愚かな自分に腹が立って仕方がないんです」



だけど私のユンギへの想いが変わるはずもなくて…
だからこそそんな自分が許せなくて…


ただただ辛いんだ

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