＊ ページ37
涼介はそのまましばらく、私の肩で子どもみたいに泣き続けた。
いつもあんなに冷静で強い涼介がこんなになるなんて、一体何があったのだろう。
彼から伝わってくる悲しみの大きさに、最近の何もかもは一旦忘れることにした。
せめて少しでもその気持ちが癒せたらと、小さい子をあやすみたいにぽんぽんと、優しくその背中を撫でた。
彼には彼の、背負うものの重さと苦悩があるのだろうと、
その時初めて、痛いくらいに感じた…
.
そのままどのくらいそうしていただろうか。
すうすうと穏やかに揃っていった彼の呼吸
A「涼介…？」
そっと名前を呼んでみたけれど返事はなく、彼は私の肩にもたれたまま眠ってしまった。
憑物が落ちたようなその寝顔が、あどけなくて本当に幼い子どものように見えたので、久しぶりにほんの少しだけ心が和んだ。
彼を抱き締めた格好のまま、座り込んでいた布団の上に静かに倒れた。
今日はここで少し休んでいったらいいや。
朝になって、この部屋で涼介が寝ていたところで、
私たちはもう直ぐ夫婦になる者同士。
誰かに咎められるようなこともないだろう。
すっかり冴えてしまった目のままで、ゆらゆらと揺れる行灯の明かりをじっと見つめた。
.
そのまま、何を考えるでもなくただぼんやりとそうしていた。
その時不意に、本当になんの前触れもなく、
部屋の障子戸が開いた。
A「…？」
誰だろう。彼を起こさないように、そっと体を起こす。
A「あなたは…、」
そこにいたのは意外な人物だった。
.
A「どうかした？まだ起きる時間には早いと思うけど…」
戸の向こうに立っていたのは、涼介の幼馴染みでもあるあの若い女中で、
確か名は菊乃と言っただろうか。
菊乃「……、」
彼女は私の問いに応えることもなく、ほとんど無表情のままゆらりと部屋に入ってきて、
隣で寝ていた涼介の顔をじっと見つめた。
涼介「ん…、」
気配を感じたのか、ゆっくりと開いた涼介の瞳。
菊乃はそれを見て、持っていた小瓶の中身を…何か液体のようなものを部屋のあちこちに巻き始めた。
A「え…ちょっと、何をしているの…？」
涼介「菊乃…？」
まだ掠れた声のままで涼介が目を擦った時、彼は何かにはっと気付いた。
涼介「やめろ！」
彼がそう叫んで立ち上がった瞬間、菊乃は徐に行灯を倒し、
辺りは一瞬で炎に包まれた…
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ばぶてり - とりあえず今出ている分まで全て読みました。すごく物語を作るのが上手く違うのも読みたい！と思って他の作品も見に行ったらまさかの前に読んでいた作品のほとんどが作者様でした。今まで色んな人の作品を読んできましたが、この作品が1番好きです。応援してます！！！ (2020年8月23日 9時) (
レス) id: 9d1b03072c (このIDを非表示/違反報告)
° * 。いのくま。* ° - 待ってました！現実世界、お疲れ様です！慧くん、どうなっちゃうの…？！というハラハラが止みません！最終話を読んでも感動で胸一杯になると思います。ちゃみ様の小説の世界観が大好きです！そして小説も！はな壱もんめ！ラストスパート、頑張ってください！ (2020年6月29日 1時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
この(プロフ) - 待ってました！！読んでるだけ自分が主人公になったような感覚になり、ハラハラドキドキしてます！！この時期いろいろと忙しいかと思いますが無理をなさらずちゃみさんのペースでゆっくり書いてください！上から目線な感じになってすみません、楽しみに待ってますね！ (2020年6月29日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - 伊野尾様はこれからどうなるのか…涼介様はどうするのか…夢主cはどの道を進むのだろうか…。伊野尾様はそのまま素敵で涼介様は夢主cを想っているのが凄く伝わるし…。結末、楽しみにしておりますっ！ (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - お久しぶりです！この自粛中お引っ越しをしまして、ネット工事ができず…むずむずしておりましたw久しぶりにみたちゃみ様のはな壱もんめ！感動して涙が溢れましたw (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2020年5月1日 0時
