＊ ページ32
『涼介に慧の何が分かるの？
あなたは百年前に何があったのか、本当に全て知ってるって言える？』
あの時、澄んだ瞳の問いかけに答えられなかったことが、ずっと心に引っかかっていた。
.
確かに百年前の出来事は、山田家に代々伝わるあの書物の中に書き連ねられていたけれど、
それはあくまでこちら側の視点に立ったものばかりで、史実の通りだったかは分からなかった。
それに加えて、あの夜のあの出来事_____
Aの言葉と、そして、
俺に斬られた瞬間のあいつのこと。
様々なことが重なり、自分の中で、
『事実をきちんと知りたい』という気持ちが大きくなっていた。
心に留まったことを、そのままにしておくのは性に合わない。
.
涼介「………。」
『有岡』という表札がかかった門の前で足を止める。咳払いをひとつして、その門の扉を叩いた。
「山田様、ですか」
しばらくして小さく開いた扉の向こうから、
若い男が顔を出した。年の頃は俺と同じくらいか、もう少し若いだろうか。黒目がちな瞳に少し幼さが残っている。
涼介「そうです。本日は急にも関わらずお時間を作っていただいてありがとうございます」
頭を下げると、
彼は門を大きく開き、「どうぞ」と屋敷の中に招き入れた。
.
「有岡颯馬と申します。歴史学者の方、と伺っていましたが」
涼介「えぇ、この地域の民俗学が専門です。今はあの山の集落について調べているところで」
颯馬「そうでしたか」
.
『狐狩り』の後、あの集落に住んでいた一族は次々と山を降り、
さらにその殆どの家が、この街そのものから去ってしまった。
しかし事実を調べる中で、この有岡家だけがこの街に今でも残り続けているということを知り、
何か当時の事実を知る手掛かりが掴めればとここまで来た。
山田家に忖度した偏った見方ではなく、事実を客観的に知るために、身分を隠してここまできた。
刀を持たずに出歩くなんていつ以来のことか。
多少落ち着かないが仕方ない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ばぶてり - とりあえず今出ている分まで全て読みました。すごく物語を作るのが上手く違うのも読みたい！と思って他の作品も見に行ったらまさかの前に読んでいた作品のほとんどが作者様でした。今まで色んな人の作品を読んできましたが、この作品が1番好きです。応援してます！！！ (2020年8月23日 9時) (
レス) id: 9d1b03072c (このIDを非表示/違反報告)
° * 。いのくま。* ° - 待ってました！現実世界、お疲れ様です！慧くん、どうなっちゃうの…？！というハラハラが止みません！最終話を読んでも感動で胸一杯になると思います。ちゃみ様の小説の世界観が大好きです！そして小説も！はな壱もんめ！ラストスパート、頑張ってください！ (2020年6月29日 1時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
この(プロフ) - 待ってました！！読んでるだけ自分が主人公になったような感覚になり、ハラハラドキドキしてます！！この時期いろいろと忙しいかと思いますが無理をなさらずちゃみさんのペースでゆっくり書いてください！上から目線な感じになってすみません、楽しみに待ってますね！ (2020年6月29日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - 伊野尾様はこれからどうなるのか…涼介様はどうするのか…夢主cはどの道を進むのだろうか…。伊野尾様はそのまま素敵で涼介様は夢主cを想っているのが凄く伝わるし…。結末、楽しみにしておりますっ！ (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
伊野尾様Love.@七星 - お久しぶりです！この自粛中お引っ越しをしまして、ネット工事ができず…むずむずしておりましたw久しぶりにみたちゃみ様のはな壱もんめ！感動して涙が溢れましたw (2020年6月8日 15時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃみ
| 作成日時：2020年5月1日 0時
