腹が減ってはなんとやら【雪赤】

6日目・夜 ページ21

「いらっしゃい！おっAちゃんじゃないか！」

「こんばんは〜いつものと、あと生ビールちょうだい」

「あいよ！」


今日はいつもより仕事が遅くなってしまった。
中華屋に行くと、すでにカウンターでは深澤がラーメンと炒飯を食べていた。

私はその横に一つ席を開けて座る。
麺を啜ってた深澤が顔を上げて、ニヤニヤしながら話しかけて来た。


「今日は一段と疲れた顔してんな〜」

「うっさい、深澤こそラーメンみたいな顔してんじゃん」

「よくわかんねー例えすんなよ！ちゃんといじれよ！」


相変わらずキレの良いツッコミをする。


「はい！まず生ね！珍しいね、月曜から飲むなんて」

「ありがと〜。ちょっと疲れちゃって」

「そうなのかい？ああ、じゃあ一昨日も忙しくて来てくれなかったのか」

「そうだった！土曜日来たらAいなくてビビったんだけど」

「深澤、休みの日にデートする彼女いないの…？」

「そこじゃねー！今は俺がフリーなのは関係ねえ！」

「あはは」


出されたジャッキを煽ってアルコールを体に送り込む。
仕事終わりのビールは土曜日だけにしてたんだけど、なんとなく今日は飲みたい気分だったんだよね。

ていうか、土曜日来なかったのそんなに気にされると思わなかった。

あの日は宮舘とイタリアンでランチして、そのまま帰っちゃったからなぁ。
そっか、いつもお昼はここ来てるの忘れてた。



「土曜日はね、会社の同僚とお昼食べてたからさ」

「えっ、いつも1人で菓子パン食ってるAが…？」

「深澤、今日奢らすよ？」

「はいよ、醤油ラーメンと餃子ね！じゃあ深澤さんに勘定つけとくからな！」

「ちょ、待ってよ店長ぉ！」


目の前で繰り広げられるいつもの光景に、ちょっと元気出た。

はぁ、ラーメンの良い匂い。


「いただきます！」


お腹が満たされれば、この鬱々とした気持ちもなくなるよ。
きっと、きっとね。

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