腹が減ってはなんとやら【雪赤】

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小説かドラマでしか聞いたことのなかった、トイレ行ってる間に支払いを済まされるというやつをやられました。

伝票見てないから分かんないけど、流石にまずいって宮舘さん！
そこまでやって貰う義理がないよ！


「お願いいくらだった！？払わせて」

「俺が連れ出したんだからこれくらい出させてよ」

「無理！むりむり！悪いってマジで！」


彼氏はおろか男性に奢られた経験がないので、どうしたらいいか分からない私はとにかく必死に引き下がった。
そのあまりの形相に困ったように笑う宮舘は妥協案として


「分かった。じゃあこれからたまに夜も一緒に食べてよ」

「な、なんじゃそら」


また食事する約束を取り付けられてしまった。
だけど、こんなんお礼になります？

自分で言うのもなんだけど、私との食事にそんな価値はないかと…

なのにどうして宮舘はこんなに食事を一緒に取りたがるのだろう。
そんなに私の食生活が心配だったのかな？

隣を歩く宮舘に見下ろされる。


「いいじゃない独り者同士、仲良くしようよ」

「………分かった。でも次は私が奢るから」

「ふふっ、了解」


なんだか凄く振り回されてる気がするのは気のせい？
だけどそれも嫌な感じじゃなくて、ちょっと楽しいと思ってしまうのは、お腹が満たされてるから…ですよね？

最寄駅の改札を抜けてそれぞれの路線で別れるときに、ひとつ思い出したことがあって引き止めた。


「宮舘！連絡先交換しよう」

「そっか、してなかったね。そういえば」

「私たち割と長いこと一緒にいるのにね」

「…うん、まさかこんなに仲良くなれると思わなかったな」


そう言ってスマホをいじる宮舘の表情は俯いていてよく分からなかったけど、そうだね。
私も、あなたと仲良くなれるとは思ってなかったよ。



今日のランチは、とっても楽しかった。




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電車に揺られながら流れる景色を眺めて、さっきのことを思い出す。

美味しかった料理のこと、上品な仕草で食べる宮舘のこと、話すときに目を見て聞いてくれるところ、



「今日の服、いつもと雰囲気違って可愛いね」




登録が終わってまた別れる間際に言われた一言を、自分の意思に反して頭は勝手にエンドレス再生し続けていた。

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