お見合い相手の岩本さん 【黄】

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周りの目もあるしなんて答えればいいのか分からない。

下を向いても自分の足もとしか見えない。



「君にはあとで話がある。


岩本君、岩本君の将来や色んな事を考えるとあのお見合いは受けた方がいいんだ。
将来安泰だぞ？」


どんな話をされるのか

クビかな


それとも異動なのかな


いや、だって私が早く話さなかったから


でも


…この時間だけが永遠に続いて欲しいって思ってしまったからダメだったのかな。

早めのクリスマスプレゼントだったな


首に巻いてあるマフラーを解いてそれを手に持つ。


返さないと

彼から貰ったものや借りたものを


どうしようと考えていると目の前に革靴が見えた。


…男性の革靴だ


ゆっくりと顔を上げて誰か確認すると


「Aさん」

「……これ」

どうして彼なのかな

マフラーを彼に渡そうと差し出すと彼は私の手を引いて元来た道を歩きだした。


革靴が地面につく音がはっきりと聞こえる。


「こら！どこ行くんだ」
「戻ってこい」


後ろから専務の声が聞こえた為振り返ろうとしたらぎゅっと掴まれている手が強くなった。


彼の方を見ると何も言わないで駐車場に向かうと助手席のドアを開けて私を座らせた。


「…あの」


車のエンジンをかけて進みだした車


隣の人に声をかけると私の方をチラッと見てから話した。


「どこ行きたい？」


「…会社は」


「3日ぐらい早いけどクリスマスデートする？」


「……私が専務から頼まれていた事とか聞かないんですか？」


「そんな泣きそうな顔見ると勘には来るよ」



私そんな酷い顔してたのかな



ショッピングモールにつき色々とお店を見ていると岩本さんは渡辺さんに電話をしていた。


多分今日私が来ない理由だろうな


…多分仕事行ったら聞かれるだろうな


電話から戻ってきた岩本さんは私の傍に来ると何事も無かったかのように一緒にお店をまわった。


「スーツ姿の男女がこう平日に店をまわるって傍から見たらどう思うんだろうね」

「…サボりって思いますかね？」

「まぁサボってるんだけどね」


少しして歩いていると私の携帯が鳴った


見ると会社から


…出た方がいいよね


携帯の画面を眺め いざ決意をして押そうとするとその携帯を岩本さんは手に取った。


「え」

「俺の方だけ見てて」

「…岩本さん？」

「会社がどんな事をしようと
俺はAさんの手は離さないからさ」


緊張していた気持ちが落ち着いたのか涙が零れ落ちた。

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