優しいキス ページ29
そろそろ、長休憩に入ったはずだよね。
来てくれるかな…
空き部屋で紫耀を待ちながら、
不安でいっぱいだった。
来てくれたら、
ちゃんと謝ろう。
そして、
大好きだよって。
でも、
許してくれなかったらどうしよう…
静かな部屋で、
ビルの隙間から見える空を見上げながら、
不安と緊張で、
広がる綺麗な青空も目に入ってなかった。
ガチャッ
ドアが開く音がして、
見上げた空から目線をドアへ向けた。
ゆっくりと開いたドアから紫耀が見えた。
紫耀は、急いでドアを閉めると、
紫耀「ごめん、待った？」
A「ううん。ごめんね、休憩なのに来てもらって…。あの、私…ごめ……」
紫耀「ごめんなさい！」
思いっきり頭を下げて、
大きな声で謝った紫耀。
A「えっと…私も…」
私が言い掛けたごめんなさいは、
紫耀のごめんなさいによってかき消されてしまった。
紫耀「あー！いい！いいから。黙って！俺が悪いの。だから、俺が謝るの。」
A「えっ、でも…、私も…」
紫耀「あー！！よし！終わり！仲直りね。ね？」
ね？っと言いながら、
首を傾けてる。
可愛いな…
でも、
モヤモヤ。
…モヤモヤ。
仲直りだと言って、
腕を広げて私に一歩近付いて来た紫耀。
そんな紫耀から逃げるように、
私は一歩下がり、
A「怒ってもいい？」
なんで謝らせてくれないの？
いつになっても変わることの出来ない、
すぐに逃げてしまう私を変えたくて、
だから謝らせて欲しいのに。
紫耀「えっ？…えっ？A？」
A「黙って。」
紫耀「は、はい！」
A「ごめんなさい！それと、大好き！」
ちゃんと謝りたい。
頭を下げて謝った。
紫耀「A…。Aー！」
私の名前を呼びながら、
抱き上げられ、
グルグル回られた。
A「キャー。アハハハ。笑」
これで、
本当の仲直りだね。
笑い合いながら、
お互いに何に謝ったのかまでは話す事はしない。
何もかも言葉にすれば良いわけじゃないから。
言葉にしなくても、
私達はその事を分かっていた。
でも、
ちゃんと反省しているって事は、
お互いに伝わっていた。
だからそれでいい。
なんだか、
暗黙の了解っていう、
そんな関係になれている事が、
なによりも嬉しかった。
A「紫耀？」
紫耀「なーに？」
私を抱き上げたまま、
私を見上げた紫耀に、
A「早く帰って来てね？」
紫耀「うん！」
そっと下ろされると、
優しいキスをした。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2019年11月24日 0時
