恋 彼らの片思い

おーちゃんの場合 13 ページ14

で。今。

俺は忠に宣戦布告をしたわけだ。
めでたい席でどうかと思ったけどさ。

ふたりが併せてきたスーツは
ふたりによく似合ってた。
全然顔立ちは違うのに双子みたい。
悔しいけど、あいつらの間に割って入るなんて
誰にもできねぇなって思う。

『ニコイチ』

ありきたりだけど、あいつらのためにあるような言葉。

俺が一発かました直ぐ後に
追い打ちかけた兄ぃ。
忠、気合い入ったんじゃねぇのかな。
俺はともかく、松兄ぃ怖いもん。

｢おい、オマエもだったのか｣
松兄ぃが俺んとこ来てゲラゲラ笑ってた。

｢お互い不毛な片思いだなぁ｣
だって。

｢不毛すぎて笑っちゃうよ｣

あ。忠、キスしやがった。

｢俺んやからなぁ｣

わかってるって。

松兄ぃもしょーがねぇなぁって呟いてる。

｢っつーか、なんでマルなんだろ｣
｢俺もそう思う｣

簡易ステージにあっちのグループが集まってきた。
マルがボーカルとって１曲演るらしい。
挨拶してるけど、あちこちからヤジが飛んでる。

ヤツらが始めたのはとびきりのラブソング。
バンドとしても上手くなったよなぁって本気で思う。
それぞれの音が寄り添いあって心地よく響いてる。

ニコニコと歌うマルの声は
わたあめみたいにフワフワと甘い。
愛情に溢れて誰もを包み込んでる。

時々見せる忠とマルのアイコンタクト。
微笑み合うふたり見てたら
心ん中がホコホコとあったかくなってきた。
幸せそうな顔しやがって。

たぶん隣にいる松兄ぃもおんなじ気持ち。

はぁ。完璧な失恋。
でも悔しいから認めてやんない。


｢今日は飲むぞ、付き合え｣
｢うん。ベロベロになってもいい？｣

マルの甘い声。
好きだよって、また見つめ合ってる。

｢｢乾杯｣｣
フラれたもん同士。
松兄ぃと俺。

カチンとグラス合わせた。



end

作者より　追記あり→←おーちゃんの場合 12

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