山猫に一目惚れ (ページ16)

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贈るページ16

それから暫しの沈黙の後、Aはまだ、部屋を出る様子のない鯉登を見る。彼は、顎に手を当て、うーん、しかし･･･と唸りながら顔を四苦八苦させていた。どうやら、何かいいたいようだ。───その視線の先には、件の写真があった。

｢写真がどうかしたの？｣

｢あ、いえ、その･･･大変、おこがましい限りなのですが、その、先の鶴見少尉殿の写真が欲しくて･･･でも、藤宮少尉殿が大切にしていらっしゃるものですし･･･｣

｢別に良いよ？丁度ここに、同じのが2枚あるし。｣

なんだか、可愛いお願いだと思ったAは、先程の写真の1枚を渡す。

｢ほ、本当ですか?!あ、あいがとごわす！｣

｢あはは、訛っているよ。｣

｢う、嬉しくてつい･･･！一生大切にします！では、またの機会に！｣

そういうと、鯉登は写真をまるで壊れ物でも扱うかのように懐にしまい、軽快な足取りで立ち去って行った。

鯉登がいなくなり、途端に静かになった執務室。今日はなんだかとっても、忙しない1日だったなと、Aは感慨深く思った。でも、悪くはない1日だった。むしろ、1番良い日だ。運命の日とすら思う。なぜならば、今日、初めて、人生で密かに憧れていた恋をすることができたのだから。その恋は前途多難かもしれないが、それでも、Aは諦めることは無かった。彼への想いが、私を変えた気がした。もう、前の自分とは違う。彼のためなら、全てを捨てられる────そう、Aは固く感じた。

(それに、なんだかんだで、鯉登君と仲良くなれたし。すっかり、鶴見少尉の──大ファンとでもいうのかな？───とんでもない勘違いされたけど汗)

目まぐるしく表情と態度が変わる鯉登を思い出し、Aは、フフッと小さく笑った。

｢さて、残りの仕事を早く終わらせよう！｣

時折、彼に想いを馳せながらAは黙々と仕事を再開した。

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｢──よし、これで完璧！まるで、私の隣に鶴見少尉殿が常におられるようだ！素晴らしい！フフ、我ながら、良い出来栄えだな。｣

Aが鯉登に渡した件の写真。その写真のAの顔の上に、鯉登の顔の写真がのりで貼り付けられ、とてもカオスな合成をされるとは、Aは知る余地もなかった。