平安時代の魔獣使い

初心 ページ18

十代後半女子の本気の駄々こねにより、精々六七歳のちびっこに狩りを教えてもらえる事になった。


ねぇなんでその(推定)年齢でそんな動けてんの？？？なんなの？？？前世は猫じゃなくてゴリラか？？？ゴリラなのか？？？


ゴホン。


教えてもらえる事になったのは良い。それは良いんだけど。



「教えを乞うている身が言うのもなんですが、もうちょっと優しく教えてもらう事は……」
「ならせめて、もう少しまともに動いてくれ！！

なぜだ？しゅうげきの際はそこそこきびんに走っていただろう！




なぜそこまでかいめつ的に狩りが下手なのだ！！」
「ひぃん私に言われても逃げ足が速いんじゃねとしか……」


鳥を追い掛けると、見事に木から転落し。


獣を追い掛けると、矢も投槍も必ず外れ。


魚を追い掛けると、あと少しのところで必ず逃がす。



なんなの呪いなの？そういう呪いなの？？
何らかの生命活動を止めようとすると必ず失敗する呪いなの？？？





めっちゃ当たりやで(にっこり)





何処からか吹いた風の音と共に、そんな言葉が聞こえてくるくらいには私に狩りの才能……いや、運動の才能がなかった。


「もっと、こう、なんというか、ええっと……」


そんな運動神経プランクトンの私二対しても、少年は年齢相応の語彙力を必死に駆使して説明しようとしてくれている。

なんて心の優しい子なんだ、おばさん泣いちまうぜ……
っていうかあれだね、ちっちゃい子が一所懸命教えてくれてるのってなんか、


「可愛いよねぇ」
「？」


おっと口から漏れてる。

そっかぁ、この時代はまだ『可愛い』っていう言葉がないから伝わらないのか。


「えーっとね、愛(うつく)しとか、愛(めぐ)しとか、なんか、そういう感じの意味だよ多分」
「なっ、なっ……」


あれ、違ったっけ？
漢字は愛だった気がするんだけど、読みがさぁ、不安だわ。


古文ってややこしくない？皆好き？私は嫌いだったよ。
現代語訳された古典作品は好きだったけど、古典は嫌いだったよ。


凄く嫌いだったよ。


「っう、そ、そういう事を簡単に口にするな！」
「えっなんで私怒られてんの」
「は、はしたなぃ、からぁ」


後半に連れて声量が落ちていく。
顔赤くない？大丈夫？

っていか、はしたないってどういう……




平安だからか！




まだ直接的な言葉で好意を伝える時代は来てないもんな、歌だもんなこの時代。
名前知られるだけでも恥ずかしい時代だもんな。

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