アルストロメリア (ページ40)

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39. 一歩を踏み出す勇気ページ40

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午後の撮影から合流したAはどことなく、いつもと違うような気がした。たぶんこの場でそれに気づいたのは俺だけ。

「A、今日なんかぶすやない？」

『え、れんれんひっど。そんなストレートに言う？』

『やっぱ目腫れてるかなあ』なんて鏡を見ながら呟くA。正直パッと見ではあんまわからん。いつも通り綺麗な二重してると思う。でも友達やからこそ気づく違和感は、別に目が腫れてるとかだけじゃない。いつも以上に明るく振る舞う姿が、なんとなく空元気なような気がした。

「なんかあったん？」

『んー？なんもないよー？』

「絶対うそやん。なんか今日から回ってんで」

『れんれんほんまさっきからひどいで？友達じゃなかったらぶん殴ってるで？』

「ほんまのこと言うてるだけやん」

『昨日ちょっと飲みすぎちゃっただけ。二日酔い？みたいな？あたし二日酔いしたことないからわからんけど』

「二日酔いしたことないの意味わからん。そんなことありえるん」

『え、ないよ。れんれんあるん？』

「死ぬほどあるやろ」

誰しも1回や2回ぐらいはあるやろ。ましてや学生の頃なんてアホみたいな飲み方しかせんのやから。それで何回潰れたか。あんまおっきい声では言えんけど。

『えー、そうなん？ちょっとわからんから具体的に教えてくれん？』

「ぜっっったい言わへん」

『ふは(笑)』

吹き出して笑うAはやっぱりどっか無理してるような気がする。こんな時、大吾がいてくれたら無理やりにでも聞き出すんやろうけど今日は地方公演でいてない。なんなら「おらん間のAのことよろしく」なんてライン来てたし。元彼通り越して保護者やんあいつ。

「今なら話聞いたってもええで」

『……でもさあ、』

「遠慮してるん？今更やん？俺とAの仲やろ？」

『……れんれん、キャラじゃないことはせん方がいいよ』

「大吾のマネしようと思ったけど無理やった」

『ふふ、じゃあ聞いてもらおうかな』

ここじゃちょっと話しにくいなんて言うもんやから、撮影終了後、スタジオの近くにある居酒屋で軽く飯食いながら話を聞くことにした。

「あれ、Aジュースでいいん」

『んー、まあ。昨日飲みすぎたのはほんまやし』

「Aでも飲みすぎたとかあるんや」

『あたしのことなんやと思ってるんよ』

「ごめんて」

よく考えたらAと2人でこうやって飯食うん初めてかもしらん。いっつも大体大吾か正門おるし。