30. 君を愛すのは大変だ ページ31
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個人の仕事が終わった流れでそのままスタジオ入り。時間が微妙すぎて途中寄った本屋以外は特に寄り道することなくまっすぐ向かったスタジオには、相変わらず早いまっさんが1人おるだけやった。
「おはよう」
「おはよ。まだまっさん1人？」
「まだちょっと早いからなぁ。大晴は別の仕事終わって来たん？」
「そう。どっか寄ろうにも中途半端な時間やったからちょっと早めに来てもうた」
「遅いよりかはいいんちゃう？」
「まっさんにそれ言われるとまじでへこむからやめてや」
「ははっ(笑)」
あの時のまっさん、めっちゃ怖かったんやから、ほんまに。……まあ、確実に悪いのは俺やねんけど。
「あれ？それどうしたん？女の子向けやないの？」
まっさんがそれ、と指さしたのは俺の左手にある女性向けのファッション誌。バッグに入るやろと思ってレジ袋貰わんかったのに思いのほか雑誌が分厚くて結果、手で持ち歩くことになってしまった。
「これAちゃんが載ってるやつ。今日発売やねん」
「ああ、なるほど」
「なんか今月は特別企画みたいなページあるらしいねんなー。楽しみに取っときたかったからあんま詳細読んでないねんけど」
「へー、どんなんやろね」
「Aちゃんどこやろ」
Aちゃんの載ってるページを探してペラペラと頭から誌面を捲っていく。それとは別に普通のファッションコーナーにもちょこちょこ載ってたけどとりあえずこれは飛ばし。そこはあとでゆっくり見よ。
半分ぐらいまでページを進めた辺りで、"夏休み特別企画"の文字を見つけた。多分これや。
企画の最初に載ってたのは、黒い水着を着た海辺で遊ぶAちゃんのソロショットやった。
「え、これやばない」
「大晴、顔にやけてんで」
「いやいやまさか水着とは思わんやん」
「今ここに誠也くんおらんでよかったな。自分ボコられてんで(笑)」
水着姿やのにいやらしく見えないのは、水着が際どい物じゃないってのもあるけど、きっとAちゃんの人柄があるから。
細いとは思ってたけどこれはさすがに細すぎん？とか、内蔵どこに入ってるん？とか、気づかんかったけど手足長いな〜とか。思うことはいっぱいあるけど、誠也くんが来る前に一通り見てまわんと。
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作者名：てと | 作成日時：2022年9月3日 5時
