あの日のお返し ページ6
『其れは、どういう事なのですよぉ〜?』
何時もの笑みを浮かべたまま癖である耳を触る。
安吾は陽の声に申し訳なさそうに答えた。
《実は、これから取引、というのは偽造の情報でした。
____既に、取引が終わっている可能性が高いです》
偽造の情報、其れは本来の取引を隠す為に行われたものだろう。
これは完全なる特務課の落ち度。
だが、あの組織が簡単に騙されるはずがない。
ならば、可能性があるとすれば。
『特務課に、諜報員がいるのですよぉ〜』
《………完全にやられました。
早急にこの問題については対処致します。
陽さんは、組織の動きに注意して下さい》
安吾の言葉に頷き、電話を切った。
これからどう動くか、考えていると、ポアロの扉が開く。
「あ、お姉さん、電話終わった?」
『………はぁい、今終わったのですよぉ〜』
陽の推測では、黒の組織は直ぐには動かないだろう。
恐らく、本当の取引が行われたのもつい最近の筈。
作戦を練って、確実に彼等の目的を遂げる筈だ。
『あ、コナン君、安室君は資料もう見てましたかぁ〜?』
「え、うん。
見てたけど、驚いて直ぐに閉まってたかな」
『そうですかぁ〜』
ふふ、と笑う陽を見て、コナンは「何が書いてあったの?」としつこく聞いて来る。
ポアロに入り、無視し続けていたが、不意に陽は振り返って。
『あは、君が正体を教えてあげたら、教えてあげないこともないのですよぉ〜』
「______ッ」
人差し指を己の唇に当て、怪しげに微笑む陽に、コナンは息を飲んだ。
だが直ぐに、「あ、洋生菓子、美味しそうなのですよぉ〜」と上機嫌にする陽を見て肩の力を抜く。
『どうぞ、なのですよぉ〜』
「わっ!
あ、ありがとう……?」
少し高いカウンターの椅子に座ろうとするコナンを持ち上げ、優しく座らせてあげた陽。
突然の行動にコナンは戸惑った表情を見せたが、陽のこれまでの行動を見て考えるのを諦めたようだ。
陽の行動の真意を掴むなんて不可能に等しいのだから。
『ふふ、美味しいのですよぉ〜』
にこにこと笑い洋生菓子を頬張る陽は、コナンに仕掛けた盗聴器を見て、愉快げに言うのだった。
ラッキーアイテム
谷崎ナオミのセーラー服
281人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時