見られているのだ ページ40
安吾の手を掴み出口に向かって走り出した陽。
ピ、ピ、ピ、という規則的な電子音が鳴り始めた。
爆弾が爆発する前の機械音だ。
安吾が気付き遅れて走り出すが間に合わない。
相手は此処まで計算していたのだ。
山之内の為に盗んだ情報に何が書いてあったのか、彼は陽たちを消そうとしている。
倉庫の逃げ切れない位置に爆弾を置き、そして陽と安吾を殺す。
安吾は生身の人間なので爆発に巻き込まれれば死ぬかもしれない。
然し、相手は陽の公開している方の異能力を知っていても不思議ではない。
相当警戒したはずだ。
その上で陽も潰せる方法、それは今回の事件には陽が深く関わっているということが条件。
本来ならば打ち首にされていてもおかしくない様な陽。
そんな人物が関与した事件を政府が公にして調査出来るはずがない。
国家機密の組織がお抱えにしている大量殺人鬼、其れが暴露ればどうなるか。
それは目に見えていた。
『間に合わないのですよぉ!』
「僕のことはいいですから、貴方は逃げてください!」
『ッ爆弾の場所さえ分かれば!』
そう、爆弾の場所さえわかれば、爆弾を異能力で凍らせて爆発を阻止できる。
爆弾の場所さえ分かって仕舞えば____
『………ごめんなさい、安吾君』
間に合わない。
そう判断した陽は掴んでいた安吾の手を離した。
「良いんですよ」
最期に笑った彼はそう言った。
それを聞いて陽にしか出せない速度で出口まで走る。
最後。
倉庫を出る時に____赤く光る防犯カメラを見てから。
****
映し出された映像に映るのは赤い炎、そして黒煙だけだった。
大きな爆発音と共に映像が途切れたのを見て、それを見ていた人物は肩を震わせる。
くつくつと喉を鳴らし、極力まで笑い声を堪えているのだ。
「____これで全て上手くいく」
トントン、と規則的に指が机を叩いた。
口角を釣り上げ笑う人物は、段々と机を叩く指の速度を上げていく。
そして、愛おしげに手元にあるパソコンに表示された情報に目をやった。
「これで、私の会社は成功し、彼奴の会社は潰れるのだ」
黒髪に混じった白髪を撫で付け、その人物はいやらしく笑った。
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時