遅刻魔さんは此方です ページ39
到着した倉庫は神奈川県内の港の方だった。
潮風が吹き、防砂林が強く揺れている。
人通りの全くない地域にぽつんとあるその倉庫は古びていて、所々錆びていた。
何処か不気味な倉庫に陽が躊躇なく足を踏み入れると、奥には既に安吾が来ている。
『安吾君、お疲れ様なのですよぉ〜』
「ええ、お疲れ様です。
今回はちゃんと時間前に来てくれたんですね」
『ええ〜？
安吾君が教えてくれた時間よりは遅いのですよぉ〜？』
「だって貴方、何時も遅く時間を言っても本当の集合時間を推測して結局遅れて来るじゃないですか」
『えへへ、何の事かさっぱりなのですよぉ〜』
呆れた様に溜息をつく安吾。
そう、陽はご想像の通り遅刻の常習犯である。
故に安吾は大事な取引の時に支障が出ない様に、と毎回早めの時間を教えるも、陽は
『その三十分後ですねぇ〜、わかったのですよぉ〜』
と言って本来の時間を当ててしまうのだ。
そしてその時間通りに来るはずもなく、結局遅れて来る。
いつか安吾の髪がなくなってしまうのではないか、という程それは安吾にストレスを与えていた。
『ここが約束した場所なのですよねぇ〜？』
「はい、あと十分程で時間になるのですが……」
「時間前に来る気配はありませんね」安吾は腕時計を見ながら答えたのに陽は頷き、不意に鼻をすん、と鳴らす。
先刻から気になっていたのだ。
この倉庫に漂う匂い。
古いのと、海に近いのもあってお世辞にも臭くないとは言えない倉庫。
その中に混じる、圧倒的な異臭。
これは＿＿＿＿
『＿＿＿＿安吾君、逃げるのですよぉ〜！』
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作者名：鸞宮子 | 作成日時：2020年1月12日 16時
