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偽物の本気の攻防 ページ34

「____いい加減ッ諦めたら、どうだ!」







『____ッシ』







東階段で繰り広げられる攻防戦。

降谷が陽を捕まえようと手を伸ばすが、それを陽は躱す。

そして陽が逃げようとすれば降谷が邪魔をする。

終わりの見えないこの戦いに終止符を打つものは未だ現れない。

警察の援軍が来れば陽は終わるだろうが、降谷が外部と連絡を取ろうとしているのを陽が全力で阻止しているのだ。








『しつこいなあ』








「お前こそ!」







そう言って降谷の顔にめがけて蹴りを放つ陽。

だが降谷はそれを屈んで避け、代わりに陽の足に向かって蹴りを放った。

陽もそれを横に回って回避、驚きの身のこなしに降谷は目を見開く。




先刻から陽は足技しか使っていない。

そして、手加減もしている。

足技しか使っていないのは得意不得意が関係しているのだが、手加減に関しては陽の私情であった。

仲がいいわけではないが顔の見知った仲である降谷に、怪我を負わせるつもりはない。

もちろん降谷は、陽が完璧に変装して、声も一回り低くしているので陽だということに気付けない。

異能力を使うのも一つの手だが、それを使えば一発で身元が割れてしまうだろう。

故に、本気を出すわけには行かないのだ。

それに____








『____そろそろかな』









「何がだ!」








降谷の拳を手で払い、腹に膝蹴りを入れようとするがそれも降谷は回避する。

降谷はチラと余所見をしたのを好機と思い、陽にもう一度拳を放つが、それも避けられてしまう。




陽が此処まで粘ったのには訳があった。

例え此処で降谷から逃げ切ったとしても、下には大量のパトカー。

逃げられる気がしない。

なので、万が一に備え応援を呼んでおいたのだ。

非常に申し訳ないとは思うが、これが最適解。

その為の、時間稼ぎ。








______prrrrrrrrr









陽のスーツの内ポケットから電子音がなり、降谷がそれに反応した。








「鳴ってるぞ、出ないのか?」








『あは、君は僕が電話に出るのを待っててくれるのかい?』








「待つと思うか?
試して見てもいいぞ」








『馬ァー鹿』









最後に挑発を残し、強く踏み込む陽。

電話が合図だった。

降谷に今迄の比にならないほどの速さの蹴りを顎に放ち、降谷を動けない状態にする。

そして、一気に屋上に向かって階段を駆け上った。

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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時

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