雨は狂王の機嫌も直す ページ26
「____陽さん、仕事が入りました。
来て下さいますね?」
『はぁ〜い、良いのですよぉ〜』
雨の降る午前、陽宅に安吾が訪ねてきた。
数分前にコナンが呼び鈴を鳴らしたが、それは居留守で回避。
流石にコナンでもピッキングはできないだろうと、鍵を閉めておいて正解だった。
「やけに機嫌がいいですね」
いつもよりも笑みの深く刻まれた陽の表情を見て安吾は呟いた。
恐らく、雨が降っているせいだろうか。
予報では今日一日雨とのことだったので、きっと一日中機嫌が良いままだろう。
『さあさ、安吾君。
特務課に言って資料を貰うのですよぉ〜』
スーツの肩に水滴のついた安吾にタオルを渡し、直ぐに安吾の愛車に乗り込む。
車のガラス越しに安吾が溜息を吐いたのを見て、小さく笑い声を漏らした。
遅れて乗り込んで来た安吾は、「ありがとうございます」と言って陽にタオルを返す。
「今回なんですが、珍しい仕事なんです。
特務課に直接仕事を頼みに来た人がいるんですよ。
その人が、ある組織の不正を暴いて欲しいとか」
『探偵社じゃなくてですかぁ〜?』
「探偵社は今立て込んでるそうで。
彼方は依頼とともに此方からの依頼もこなして貰ってますからね」
「人出のある此方で対処しないと」と安吾はシートベルトをつけ、車を発車させる。
強くなって来た雨が硝子にあたり、強い弾けるような音が車内に響いた。
それを心地良く思いながら、陽は耳を触り目を細める。
『その依頼人さん、どんな人でしたかぁ〜?』
「部下があったので僕も詳しくは知りませんが、“何処にでもいそうな人”と言っていました。
ああ、後会長だと言っていましたね、かなり大きな」
手を下ろし、大きな灰色の瞳に米花の街並みを映す。
殆どの人が傘をさしているが、一人だけずぶ濡れになって走るスーツを着た男性がいた。
胸元には光るバッジ。
止まった車内でその人物を見ていると、丁度車の横を通り過ぎる時その男性と目があった。
深い黒の瞳の下には隈があり、お世辞にもモテそうとは言えない程冴えない容姿。
陽はすぐに目を逸らし、車の前方を見る。
視界の端に先程の男性が映るが、陽は気にせず、その男性も何事も無かったかのように走り去っていった。
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時