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悪戯っ子 ページ22

安吾side





陽の家を出て、携帯を取り出す。

向かうのは、休みの時に立ち寄ろうとしていた喫茶店。

ふと、陽の家を思い出す。

家を用意した時は、部屋が本で溢れかえる事を想像していた。

だが想像以上に整っていた陽の家。

否、整っていた、と言うよりは家具や雑貨が最小限しかないのだ。

殺風景な部屋。

自分の趣味を相手に押し付けるつもりはないが、今度何か雑貨を買ってやろうか、などとのんきに考えながら歩く。






《___もう一度、三人で酒を飲みたかった》








嘗て、自分が零した言葉。

彼の人を変えてしまうきっかけになった友人は、悲しそうな顔をした。

彼が殉職してから、陽は漁る様に本を読み始めた。

特務課で保護して居たから良かったが、仕事を与えなければ、寝食も忘れてしまう程に。

なにかを探す様に、見つける様に、本を読み漁っていた。



ふと、消えたと思い部屋に行けば、溢れたインクのむせかえる様な匂いと共に、大量の汚れた原稿用紙に溺れる様にして眠って居た陽。

陽は今、小説を書こうとしているのだろう。

織田が、何か陽に約束させたのだ。







「____彼の人は、本当に何を考えているのでしょうかね」








嘆息し、今日だってそうだ、と呟く。


今日、魔人から貰ったと言っていた資料を印刷したが、それは可笑しかった。

陽は《沢山の情報をくれた》と言っていたが、印刷したあの程度の情報で彼の人が満足するわけがない。

きっと、これ以上に陽は情報を貰っているはずだ。




昔から、彼の人は自分だけの情報と、他人にも公開する情報を分け、敵も味方も手のひらの上で踊らせていた。

超人的に回る頭脳と、自分の異能力を武器に。

気付けば陽に言いくるめられ、事件は収束へ向かっている。

そんなことが一緒に任務をしていて、多々あった。




今回も同じであろう。

きっと、陽は自分だけの情報を手に入れて人々を踊らせる。

そして、あの笑みを浮かべたまま消えて行くのだろう。







「心配は要りませんかね」







楽観的になりすぎか、と苦笑を一つ零し、陽がくれたマフィンを取り出した。

手に乗せたそれからは美味しそうな匂いがして、真っ黒で___







「真っ黒?!」








ああ、想像出来る、彼の人が笑っているのが。

酒を奢るのは無しだ、と一人で文句を言いつつも、小腹が空いていたので一つ口に入れる。








「………なんで美味しいんですか」








………何なのでしょう。

参事官補佐はイケメン→←ゲテモノ料理


ラッキーアイテム

谷崎ナオミのセーラー服


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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時

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