グリム童話 ページ20
「これが、その情報ですか……」
『ん〜。
情報はあまり掴めていないとか言ってた癖に、結構あるのですよぉ〜』
安吾に携帯を渡し、ドストエフスキーが送ってきた情報を紙に写してくれる。
ドストエフスキーの番号を暴いてやろうと安吾が格闘していたが、「それは無理だ」と陽が止めれば渋々やめていた。
流石ハッカー。
しっかりと発信元の隠蔽までできている。
感心しながら安吾から携帯を受け取り、情報を見た。
《異能組織名:
組織人数:ヤーコブ・グリム、ヴィルヘルム・グリム
その他百数名
(異能力所持者は上記の二名のみ)
拠点地:欧州
備考:次に襲うのはヨコハマのある会社かと思われる。
まだ不特定な情報の為、記載しない。
P.S.相応の見返りは求めますよ》
『あは、いっぺん殺してやりたいのですよぉ〜』
にこりと貰った資料を握り潰しながら笑う陽。
敦があわあわとするが、それに他の二人は涼しい顔で無視をし、情報を隅々まで見ていた。
そして、陽がゆっくりと腰を上げる。
それに反応した鏡花は、己の唇を震わせた。
「____陽さん、何か隠してない?」
陽の灰色の目が鏡花を捉える。
悪戯っ子のように輝く瞳に一瞬だけ深い影がさすが、陽はいつも通りの笑みを浮かべ答えた。
『あは、隠し事なんてないのですよぉ〜?』
そう言って台所の方に消える陽。
山吹色の洋服の裾が視界から消え、鏡花は口を閉ざし、手元の紙に再び視線を落とした。
ぐしゃぐしゃにして置かれた資料。
もう、要らないのだろうか。
そう思って敦は手に取り、もう一度資料を読み直す。
見た所、さして重要な情報はない。
異能力者の人数は載っているものの、それも確定したものではないだろう。
すっかり冷えてしまった珈琲を飲もうと手を伸ばすと、ガタン、と音がなりその方向を見る。
安吾が椅子から立ち上がった音だった。
「僕はこれで帰らせ貰います、貴重な休日ですからね。
………ああ、お二人共__」
『____あれぇ、安吾君、帰るのですかぁ〜?』
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時