追憶の回廊 ページ17
《済まない、俺は多分死ぬ》
君が謝る必要なんてないさ。
悔しいのは、それを助けることができない自分。
《もし、俺が死んだら、俺の夢を変わりに叶えて欲しい》
君は本当に残酷だね。
私にそうやって人を殺すのを辞めさせ続ける訳だから。
《済まない》
君は謝らなくて良いんだよ。
本当に、君は素晴らしい人間だ。
《ありがとう》
嗚呼。
____本当の本当に悔しかったのは、君を殺すしか方法を見つける事が出来なかった自分だよ。
****
《悪かった。御前さんを残して行くつもりなんてなかったのに》
煩い、馬鹿。
馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿。
なんで、そんな死にそうな顔をしているのさ。
《約束は忘れてないだろうね?》
勿論、覚えているさ。
一語一句違えずに、しっかりと。
だから。
《拙はもう助からない》
馬鹿なこと言わないでよ。
もう、大切な人が死ぬのを見たくない。
ねえ、こっち向いてってば。
《御前さんは人を殺すのを辞めなかったよな》
もう辞めるさ。
アンタが生きてくれるなら。
《拙が死んでからも殺すのを辞めなかったら、拙は死んでも尚不幸になる》
辞めるよ、辞めるから、生きてくれ。
《最後に、言いたいことがある》
お願い、生きてよ。
本当は兄さんって呼びたかったんだからさ。
また、妹って言って、笑いかけてくれ。
《____御前さんは最高の妹だ。愛している》
私も、兄さんが好きだよ。
愛してる。
だから、未だ、生きてよ。
無理に笑わなくて良いから。
目を、瞑らないで。
アンタの光が消えてしまいそうで怖いんだ。
.
____“兄”の手が、床にだらしなく落ちた。
.
____また、私は救えないのか。
.
『ああああああああああああああああ!!』
____兄が死んだ瞬間。
____壊れかけて居た《狂王》の精神は完全に崩壊した。
____この日、陽は最後に《狂王》として、ヨコハマを破壊した。
____暴君であった《狂王》は、自分に生命の終止符を打ってくれるものを探すようになった。
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時