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……その日の夜。



私は着物を何枚か重ね着し、羽織を肩にかけると
部屋の外で待つ男の元へ向かった。


今夜は冷え込むだろうと、前もって準備をしたのだ。

男に羽織を借りるなんてことはしたくない。
男の匂い(人間の匂い)が染み付くのが嫌いだからだ





「あ、A様!」


『準備に手間取っちゃって……ごめんなさい』


「い、いえ、大丈夫……です。
……あの。それより、湯浴みの後ですか?」



男は頬を赤らめながらそう尋ねてきた。
そして何故か吃りが激しい。





『ついさっきお風呂に入ってきた所だけど…
どうかした?』


「そう、なんですね
……行きましょうか」




男の喉仏が上下に動いたのが見えた。
それと同時にゴクリ、と唾を飲み込む音もする。

廊下が静かだから余計に大きく聞こえて、
私からしたら、男の考えていることが見え見えすぎて
いい気はしなかった。




「今夜は冷えますね」


『うん、だから厚着してきた』


「そうなんですか…。
それなら私の羽織の出番は無しですね、残念ながら」





着物を重ね着して更に羽織を羽織ってきたのは正解だった。

やはり私の思惑通り、男はその羽織を私に渡そうと考えていたのだろう。

しゅんと肩を落としている。






『……あ、ほら。
今日の月も綺麗だよ

あの人が見たら、きっと目を輝かすだろうなぁ』





屋敷の屋根裏から屋根に登り、空を見上げると
そこには大きく輝く綺麗な月。

そんな月を見ていたら童磨に会いたくなってきた。
いつもなら隣に童磨がいてくれるから、ね。




「……本当に、私じゃダメなんですか?」


『うん、ごめんね。私にはあの人しかいない』


「即答ですか……」




月から目を逸らした男は切なそうに笑いながら次に私の目を見つめた。


後ろ手をついている私の手に自身の手を重ねながら、ゆっくり近づいてくる。



私だって馬鹿じゃない。

男が今から何をしようとしているのかくらい分かる。






『……それをしたら、これから私は貴方を受け付けなくなる』



「いいですよ。
きっといつになっても貴方から恋愛的な感情を抱かれない事くらい分かっているので」



『私は良くないの。

童……ゴホン、教祖様はいつだって私の事を考えてくれる、優先してくれる。
それはもう、申し訳ないくらいに。

それなのに貴方は今、自分の事しか考えていない



だから私は貴方に惹かれない』





キッパリと、言い切ってやった私。
すると途端に男は顔を歪ませた。

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おもち(プロフ) - るみさん» おおお……!!!コメントありがとうございます……ッッ!!!こちらこそ感謝です……っ゚(゚´Д`゚)゚。 (2020年1月4日 15時) (レス) id: 9123ab14eb (このIDを非表示/違反報告)
るみ - 今ここまで読んで見ましたが……私の想像以上に最高の作品でした!!書いてくれた作者さんありがとうございます!! (2020年1月4日 13時) (レス) id: b36153d67a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - クラゲさん» ヒビが……(´・ω・`) (2019年12月1日 18時) (レス) id: 9123ab14eb (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - うささん» そそそそそんなに!!!?滅相もない!!!(;▽;)嬉しいですぅぅぅぅぅありがとうございますぅぅう!!!!゚(゚´Д`゚)゚。 (2019年12月1日 18時) (レス) id: 9123ab14eb (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - paopaoman217さん» え!?ありがとうございますっっ!!!!ヽ(;▽;)ノ更新待っててくださいね〜!!(≧▽≦) (2019年12月1日 18時) (レス) id: 9123ab14eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おもち | 作成日時:2019年11月17日 23時

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