【鬼滅の刃】彼をどうしても振り向かせたい 壱【童磨】

３１ ページ32

･



『あのー…童磨さーん…』



「……」





声をかけても動かない童磨。
何故か私の顔を見て固まってる





「泣いたの？」



『……』





今までたくさんの人の泣き顔を見てきただけある。

泣いて擦って晴れてしまった目も、今ではもうすっかり元に戻っているのに何故分かったのだろう





「頬についてるのこれ涙だよね」


『そうだと思います』




童磨からの威圧が凄くてまるで他人事のように返事をしてしまった。まぁいっか。





「なんで？」



『え……あはは、』




馬鹿らしくて言えやしない。

鬼殺の剣士に失恋を馬鹿にされて泣いて帰りましたとか絶対言えない、それこそ殺されるわ





「ねぇなんで？」


『ぐぬぬ……』





力を込めて童磨を押し返す。
童磨も力を強めているのかちょっと動いたくらい。


もー、こんな事ならもっと人間食べておけばよかった




童磨よりもっと多く、
軽く5万人は超えるほど、

たくさんたくさん




そう、それで強くなったら
童磨にも見てもらえたかもしれないのにね





『っふぬっ！！』



「わっ……力強、」




私の腕を塞ぐように閉じられた童磨の腕を思いっきりこじ開けその隙に抜け出す。





「なんで俺から逃げるの？
なんで俺の顔を見ないの？」



『……』




そっと、そーっと後ずさる。



扇を両手に持ち出した童磨はまじで怖い。

それで今から私を狩るのだろうか、
想像したら鳥肌が立ってきた、






……血鬼術を使って逃げるか？

いや、童磨に血鬼術は絶対使いたくない。
私が使うのは敵と気に入らないやつだけだ。





「どうして泣いてるの？
そんなに俺のことが嫌い？」



『いやもうめちゃくちゃ好きです！！！』



「即答だね」





いや好きすぎて辛いくらいですもん、本当なんなの？

今の表情だって凄く真顔だし
なんか本当に怒ってるし




「ほら、早く帰ろう
信者たちも待って……」


『帰らない！！』





再び童磨の動きが止まった。
笑顔が固まってて怖い。引き攣ってる。




またそれか。
今まで仕事だからって割り切ってたけどさ。



『もう帰らない！！

私の事が嫌いなくせに何でそんなに構ってくれるの？
だから私だって諦められないんじゃんか、
分かっててそうしてるなら女ったらしって呼ぶから！！



童磨なんか大っ嫌いだ阿呆！！！』





言い切った私は童磨に背を向けて走った。
(正確には逃げた。)





童磨からかなり酷く恐ろしい殺気が放たれ始めたからだ。

３２→←３０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す