いけない事しよ？〈SnowMan〉III

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家を飛び出して向かった事務所には
もうみんなの姿はなかった。



"Aの気持ちは誰に向いてるの？"



そう言われて思いつくのはただ1人。
やっぱり私は辰哉が好きなんだ。
苦しいくらいそれを実感する。



辰哉が大切に思ってくれているのなら
もう一度だけ伝えたい。


あの時、辰哉とは同じ気持ちじゃないって
逃げてしまった。
辰哉の気持ちがどういうものなのか
聞かずに終わらせた。


でも今度こそちゃんと伝えたい。
自分の言葉で、
大好きだって、彼女になりたいって。



もう逃げるのはやめるんだ。



『どこっ...』



空は雲が覆い尽くしていて
今にも雨が降りそうだった。



交差点、見覚えのある後ろ姿
お気に入りと言っていたあのパーカー



君は声をかけたらどんな顔で私を見るだろう



『、っ』



でも、私は立ち止まった。



『.....嘘つき』



雨がポツポツと降り出して私の肩を濡らす。




遠くに見える辰哉の隣
長い栗色の髪をくるりと巻いて
ワンピースがよく似合ってて
笑顔が可愛いそんな女の子。
いつか、辰哉が好きだと言った女の子そのもの。



2人の手は硬く結ばれて、
ホテル街に消えて行った。



『....なにが大切に思ってるよ。
嘘つき、嘘つき』



髪も顔も服もズボンも
ビショビショになっていくのすらも気にならない。



？「大丈夫、俺がそばにいるから」



背中から感じる温もりに顔を上げた。



『...な.....んで』

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