きっと恭弥君のおかげだね。 ページ36
輪廻転生、生まれ変わり、前世。
ただこの体に私という人格が乗り移っているだけなのか、それとも喋れない赤ん坊の時期に当たり前にあるのかもしれない前世の記憶がただ私だけ大きくなっても忘れなかっただけなのか。
仮説ならいくらでも建てられるけれど、立証されることはおそらく一生ない。
なんとなく感じてた。
目をそらしていたのはいつかふとこの日常が、夢だと思えるほどに当たり前に戻るんだろうって思ってたから。
最近よくその『前世』と漠然と呼んでいたものを思い出してしまうのは、戻れないと、これが現実だと私が認識しはじめているからだ。
決まって思い出すのは恭弥君といるとき。
元の世界に戻れないのは怖いのに、私がこの世界に馴染んでいると感じてしまっている時だった。
彼は不思議と私を引っ張ってこの世界に連れ出すから。
父の書斎の一角。
前世や輪廻についての哲学書を一つ一つ手にとっては戻す。
前世から人並みほどには本も読んできたけれど、わからない言語を勉強してまで読もうとは思わなかっただろう。
生まれてから私が一番漁った項目の本は、既にすべて読み尽くしていた。
「A」
背後から聞こえた声に、ハッして振り返る。
「あ、…お父さん」
気づかなかった、いつの間に帰ってきていたんだろうか。
…ヤバイな。
なんて言い訳しようか。
父の書斎は私が入ってはいけない部屋の一つだ。
「ご、ごめんなさ」
「やっぱりAも私とお母さんの子供だね」
何故か誇らしそうに笑う彼に、は？と思わず間抜けな声を出す。
幼い頃から賢かった私に甘い父や母が、怒ったことはなかったけれどこれは流石に叱られるかな、と思った矢先だ。
「私の仕事に興味を持ってくれたんだろう？」
外国人らしからぬ流暢な日本語を弾ませる父を見て、ホッとする。
…そういえば私は両親の仕事を知らなかったな。
血縁にさえも興味を示せなかったのはきっと、目をそらしていたからだ。
この世界に溶け込む努力をしようと決めた日。
きっと恭弥君のおかげだね。
私はお姫様にはなり得ないからね王子様。→←君のお父様を盗るような真似はしないから安心して？
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ドク(プロフ) - 一話一話、必ず笑うか、感情が動かされます。ピンポイントで笑う箇所を作るのがすごすぎる……そして面白すぎる…！！これからも頑張ってください！！ (10月7日 14時) (
レス) @page10 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - ぴょんさん» 私も貴方の感想の表現の美しさにため息が出ました…。負けないように頑張ります！笑 (2019年3月16日 23時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - 言葉の表現が美しくて読むたびにため息が出ます…。これからも陰ながら応援させていただきます。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: a5b956ec79 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！楽しみにしてくれていると思っただけで創作意欲がわいてきます！頑張ります！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 死に急ぎガールさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです！幼少期の雲雀さんとの何気ない日常はお楽しみいただけたでしょうか笑これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年1月25日 22時
