ケージ:120 ページ24
書類仕事と訓練を終え時間をもて余した私は、ひとらんらんさんの畑仕事を手伝いに彼のもとを訪れていた。
突然の来訪を迷惑がられてしまいやしないだろうか、という不安はあったけれど、ひとらんらんさんは快く私を迎え入れてくれた。
「助かるよ。そっちの花壇の水やりがまだ終わってなくてさ、お願いしてもいい？」
「はい。」
水の入ったじょうろを受け取り、花壇に歩み寄る。重たいから気を付けてね、という言葉にこくりと頷いてそっとじょうろを傾けた。
傾く西日に反射して、キラキラと宝石のように水滴が光る。葉や花に水が当たらないように、根本にかけてやるのだといつかひとらんらんさんは教えてくれた。
乾いた土に水が染み込んでゆく。
オレンジ色のその花は、コスモスというのだそう。
色鮮やかに咲き誇るそれは、手塩にかけて育てられてきたのだと雄弁に語っているようだった。
丁寧に、丁寧に水をかけていく。
あと三日。三日でここには来られなくなる。
そう思うと名残惜しかった。
花も、動物も、初めて見て、触れたのはこの場所だったから。
「やほー。」
「……あれ？オスマンじゃん。」
どうしたの、と驚いたようなひとらんらんさんの声に振り返ると、そこにはひらひらと片手を振りながらゆっくりとこちらに近づいてくるオスマンさんの姿があった。
午前中は書類仕事が終わりそうもない、と眉間に皺を寄せていた彼だったけれど、そちらはもう済んだのだろうか。
「外見たら、二人がいてさ。疲れたし、ちょっと休憩しにきた。」
肩をすくめて笑うオスマンさんに、私とひとらんらんさんの表情も綻ぶ。
要はサボりだ、とひとらんらんさんが意地悪に笑って、問答無用とばかりにじょうろを押し付けた。
「日が暮れる前に終わらせたい。来たからには手伝ってよね。」
「んえ〜！俺休憩しにきたのにい……。」
早くしろ、と渋るオスマンさんの足を蹴るひとらんらんさんと、げんなりしたように眉を下げるオスマンさんが微笑ましい。
ふふ、と思わず笑みが溢れて、ほんの少しだけ寂しくなった。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (
レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…！ (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります！ (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです！！とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です！！！！すき！！！！ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです！？！？！？！描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年2月26日 20時
