ケージ:107 ページ11
ぜんぶ。
そう言って粘ついた笑みを浮かべた彼の濁ったレモン色が、頭の片隅を常に漂い続けている。
「ラストです。」
タン、と軽やかな音がして玉が的に命中する。
「……上出来すね。」
眠たそうな声。煙草を燻らせながらショッピさんがお疲れ様です、と腰を上げた。
彼の指導の甲斐あって、相変わらずど真ん中命中、とまではいかないけれどそこそこに当たるようになってきた。手入れも片付けも、もうなにも言われなくてもできるようになった。我ながらではあるけれど、銃の扱いに関しては多少は成長できたような気がする。
手早く片付けを終える。ありがとうございましたと頭を下げてそそくさと訓練場を後にしようと扉に手をかけた。訓練が終わった以上、ここに長居する理由はない。
いつかの、彼の部屋でのこと。あれ以来私にとってショッピさんは要注意人物だったりする。……失礼だとは分かっているけれど、よくない自覚もあったけれど、私はなるべくショッピさんと二人きりにならないように彼を避けていた。
きっと、ショッピさんもそんな私を黙認していた。面白いものをみるような視線を私に度々向けては来るけれど、声をかけてくることは無かったから。
もとより彼と私の接点は、他の幹部の方よりもうんと少ない。そもそもショッピさんは基地内にいることが少ないのだ。オスマンさんやエーミール先生のように時々お茶をしたり、ゾムさんのようにお仕事以外の話に花を咲かせたり、シャオロンさんのように時々息抜きに散歩に行ったり。そういった事とは無縁で。
言葉を交わすのもこの銃の訓練の中で位だった。故に、あの日の事はあまりに鮮烈だったのだ。……あまり、よくない意味で。
だからあれ以降訓練以外で言葉を交わすことも少なくなっていたのだけど、今日は違ったようで。
「あの。」
「……はい。」
……流石に無視、なんて大それた真似は怖くてできない。
扉にかけた手はそのままに、かけられた声にそろりと振り向く。
「……いや、そんなに怖がらなくても。」
取って食うわけじゃないんすから、とショッピさんが呆れたように煙草をふかした。精一杯何でもない風を装ってはいるけれど……本当に怖かったのだ、あの日のショッピさんは。これくらい許してほしい。申し訳ないという気持ちはある。
「す、すみません。」
「……否定しないんすね。まあええけど。
はい、これ。」
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (
レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…！ (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります！ (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです！！とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です！！！！すき！！！！ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです！？！？！？！描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年2月26日 20時
