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「元々土地は祖父のものでさ、家賃は払わなくて良くて。
でも、どうやって生活してたんだろうね。わたしも良くわかんないや」
先生は何も言わずにわたしの声に耳を傾ける。
「今は、わたしのバイト代で生活してる。
と言っても全額父親に取られるんだけどね」
「・・・」
「貯金は絶対使いたくないし」
「じゃあその、小さい頃お父さんはずっと家に居たの・・・?」
「いや、そういう訳でもないよ。寧ろ家に居ない方が多かった。
普通に2.3ヶ月帰ってこないとかざらにあったし」
なかなか帰ってこないと思ったらフラ〜っと帰ってきて、ひとしきりわたしを殴ってまたどこかへ出掛けていくことも普通にあった。
「え、じゃあその間(人1)はずっとひとりだったってこと?」
「そうだよ。ずっとひとり。誕生日もクリスマスもずっとひとり。でも寂しくはなかったよ」
「え、?」
「だって他からしてみればそうは思わないかもしれないけど、わたしはこれが普通だもん」
「(人1)・・・、」
「家に親がいないのだって、親から暴行を受けるのだって、わたしはこれが普通。
だから別にひとりでも平気だし、親になにかして欲しいなんて期待もしてない」
玉森先生は眉毛を下げなんとも言えない顔でわたしを見てくる。
「引いた?(笑)」
「いや、引いてはない。だけどなんか苦しくなった」
「苦しい?」
それは初めて言われた。
「(人1)の事、初めて会った時から精神年齢大人だなとか、やけに冷めてるなって思ってはいたけどここまでとは思って無かった」
「え?」
「そうだよな、(人1)にとってはそれが普通だもんな。
なんか(人1)の事、わかった気がする。正直今朝は分かっている気でいたけど全然だった。
(人1)は色んな感情を押し殺して今まで生きてきたんだよな」
「何言ってんの?違うけど」
「ううん、違わない。その事にも(人1)は気付いてないんだよ。本当にひとりで平気な人間なんてこの世にはいねーから。あ〜そっか、だから(人1)は感情を表に出さないのか」
ひとりで納得している先生。
先生の言っていることはよくわかんないけど、
まあ黙っといておこう。
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作者名:にこまる | 作成日時:2018年7月16日 1時