人間のクズ。

社会不適合 ページ23

忘れていたのに…。

私がヘアピンでアムカの(アームカット)の様なものをしてから数日後、普段は時間が合わない兄と偶然夕食の時間が重なった。



普通に女子にしてみれば空気の読めない奴だと幻滅される様なことを話題に話しかけてくる兄。





あぁ、嫌いだ。


その表情が、声が、性格が、態度が、


私は兄の全てが嫌いだ。



兄の話を流しながら目も合わせず淡々と食事を口に運んでいく。

時折、問いかけをされれば、わざと父に話しかけ、聞こえていないを装った。


だが兄と一緒の食事、それは最悪だった。





兄は私の手の甲か、または手首の表側を見て言った。


【その傷は？】


私はいつもの様に言った。母に聞かれた時の様に。


「何でもない。傷を引っ掻いてかさぶたが剥がれたら出来た傷」


兄は疑わしげに【ふーん】と言った。
誤魔化せたのか？


【そんな傷、出来るの？】



あぁ、バレた。バレてしまった。どうしようどうしよう。もうダメだ。こいつはダメだ。

兄の秘密をバラそう。



その時私は、初めてお前を殺.して私も死.ぬ。そんなことを思った。

狂愛などに使われる表現か？
最近の言葉ではヤンデレというものが使うことが？またはメンヘラか？


違う違う。バレてしまったからだ。

あぁ、嫌だ。





「うん。出来るよ」

そうだ。誤魔化せ。嘘なんていくらでも付いてきた。そうだ。そうだ。


【そう。リスカかと思った】



「リスカ？リスカはこっちでしょ？」


手首の方、血管が見える方を指差して言った。真顔で言った。

もともと兄には明るくなど話していない。
声が低くなったって日常だ。また誤魔化せる。


【アムカってこと】



バレている。やはりバレている。もうダメだ。逃げてしまいたい。

家を飛び出して車に轢かれて死んでしまいたい。迂闊だった、盲点だった。そうだ。兄はそういう人なのだ。母たちの様にうまくはいかないのだ。




「アムカ？何それ」

【アームカットのこと】




この後の会話はなかった。何とかやり過ごせたのか？それは未だにわかっていない。

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