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その日の退社後。
俺と廉はやけ酒を飲みに来ていた。
平野「なんで俺のこと覚えてねえんだよ…」
永瀬「紫耀、もうやめとき。飲みすぎ」
廉が俺のグラスに手で蓋をした。
平野「止めんな!飲むの!」
永瀬「駄々っ子かよ…ダッサ」
ため息を零す廉を無視してグビグビ浴びるように酒を飲む。
飲まなきゃやってらんねえよ、こんなの。
ずっと探してた恋人に忘れられてて
正気で居られるオトコの方が普通じゃない。
永瀬「紫耀の気持ちは痛いほど分かるんやけどさ、
明日も仕事あんの忘れてわすれてへんやろな」
平野「言われないでも知ってるって!」
永瀬「ホンマに大丈夫かよ…」
逆に廉はよくそれでいられるよな。
恋人じゃなくても仲のいい友達だったし、
ずっと探してきてやっと見つけたと思ったら
自分たちのこと忘れられてて、
よくそんなシラフで居られるな。
そう疑問に思い廉の方を見ると、
廉は、普段は飲まないような度数の高い酒を飲んでいた。
平野「うわーーんだよな廉も辛いよなあーー」
永瀬「なんなん!?情緒不安定すぎやろ!」
もう顔中びしょびしょだ。
この液体が涙なのか鼻水なのか酒なのかも
よく分からない。
永瀬「お前顔面びしょびしょやん!
汚ねえ!まじ汚ねえ!」
平野「…つかれた」
泣き疲れた。考え疲れた。
もういいや。ここで寝ちゃおう。なんとかなる。
永瀬「っおい!このクソゴリラ!起きろ!寝たら置いてくぞ!」
平野「…うっさ」
永瀬「は!?オマエ今俺のことうるさい言うた!?覚えとけよ!」
キンキン響く高い声を聞きながら意識を失った。
夢を、見た。
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作者名:ski | 作成日時:2020年3月26日 21時